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〜烈戦記〜
第十話 〜捜索〜
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そして私を含め重鎮一同は何とも言えない空気になった。
いったい父上は何を考えられているのか。
敵大将を自分達の大将自ら逃がした事実は大きい。
だが、父上はこの国切っての読みの深さと手腕をもっているのもまた事実だった。
ださらこそ、重鎮達も父上の判断の意味を必死に探っていた。

"刑道雲様!"

そんな内宮の空気の中に兵士の声が響いた。
皆が一斉に内宮に入ってきた兵士に視線を向ける。

"なんじゃ?"
"じ、実は…"

"北国の使者は引き返していったのですが、彼らが引き連れて来た荷車が何十も我らの陣に放置されていて…"
"な、なんだと!?"
"敵の策略だ!直ちに陣から遠ざけろ!"
"やはり奴らはこれを狙ってッ…!"

"慌てるな!"

兵士からの報告で騒然となった重鎮達に父上は一喝した。
皆焦りの表情を隠せないまま父上の指示に従う。

"…して、中身は確認したか?"
"い、いえ!まだ敵国の荷車ゆえ兵士の身で勝手に確認はできませんので指示を仰ごうかと…"
"…ふむ。皆、ついて参れ"
"え?"
"ワシが直々に確認する"

皆この日何度目かになる驚きを見せた。
何故、危険かもしれない敵の荷車を大将自ら確認しに行くのか。
父上は軽率な行動を何より嫌って来たのに、どうしてここでこうまでして行動理念が狂うのか。
皆動揺していた。

"直にわかる"

そう言って父上は内宮を出られた。



そしてその後父上と私含めた家臣団が荷車の確認をしたところ、中身は全て今までに北国に連れ去られていた同族達だった。
皆やはり騒然としていたが、その中でただ一人父上だけが豪快な笑い声を上げていた。

それから父上は国の軍事優先の方針から内政優先へと切り替えた。
最初は家臣一度反対が多かった。
私もその内の一人だ。
仮に同族達が帰ってきて、北国側にも攻める意思が無いにしても、あくまで一時的に過ぎず、信用するのは危険だと何度と無く家臣を引き連れて父上に上訴した。
しかし、父上は"時が経てば人が変わり人が変われば方針は変わる。一時的だと言っていては何も変わらない。彼らは大丈夫だ。私が保証しよう"と聞き入れられなかった。

しかし、その結果私達は疲弊した内政を立て直す事ができた。
民は安寧を取り戻し、内需も安定。
商人を介した交易はその後も続ける事にはなったが、それにより北の文化の恩恵も受ける事ができた。
そして極め付けは父上が保証した通り、彼らはこの八年間の間本当に我々に害を成す事が無いばかりか、一度蹴った友好の使者を度々に出してきた。
流石に自らこの国に乗り込んでくることは無くなったが、それでも私含めた家臣達の中にも今までの北国の印象を、そして何より北国の人間である豪統殿に対しての印
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