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〜烈戦記〜
第十話 〜捜索〜
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次に零国の将軍にして旧戦国六雄"童"の武門名家、乱家の若武者、乱獲。
そしてその彼らと互角に渡り合った無名武官の懐刀…。
それが三人目、凱雲だと。

"…果たして、今ここにいる武官で足りますかな?"

顔は知らないとはいえ、まさかこんな所で北国の武の頂点の三人の内の一人と対峙する事になるとは。
豪統殿の言葉に私達の緊張は一気に高まった。
…だが。


"ふふっ、ふははははっ!!"
"ち、父上!?"

その緊張は父上の豪快な笑声と共に消し飛んだ。
皆が皆どうしたと言わんばかりに父を見る。

"いやいや!何とも清々しい武者振りではないか!"
"そ、そんな事言っている場合ですか!奴らを早々に…"
"よいよい。皆、剣を下げろ"
"父上!?"

そしてその父からは思わぬ言葉が飛び出した。
皆が渋々と剣を下ろしていく。

"…刑道雲殿、これはどういうおつもりで?"
"いやなに、そなたらの豪胆振りに敵ながらに惚れましてな"
"父上!何を言われますか!"
"お前は黙っておれ"
"…ッ"

"…ワシは歳を取りすぎたのかもしれん。そなたらの姿に胸が空いてしもうたわ"
"…情にございますか?"
"いや、勘違いしてもらっては困る。ワシはただ、そなたらの首をここではなく戦場で奪いたくなっただけの話しよ"
"…そうでございますか"

そして豪統殿は納得したように剣を納めた。
そしてそれに続いて凱雲もまた薙刀の刃を宙へ逸らす。

"行け"
"では…"

最後は短いやり取りだった。





"父上!私は納得できません!"

そして豪統殿が内宮を出た後、私はすぐに重鎮達の前で父上に噛み付いた。

納得ができなかった。
何故敵国の、しかも大将首を目前にしながら刃を納めねばならなかったのか。
しかも、そうさせたのは他らぬ自分の父の酔狂によってだ。
これでは下について来る者はどうなる?
私は父の軽率な行為を攻めた。
だが。

"心配するな晃よ。何もワシはさっき言っていた理由だけで奴らを逃がしたわけじゃない"

父上にはそれとは違う理由があると言われた。

"では何故!?"
"…なぁ、晃よ。奴らを見てどう思った?"
"はい?"

そしてさらに問い詰めてみれば、唐突に質問を突きつけられた。
最初ははぐらかそうとしているのかと思った。
だが、父は大事をはぐらかすような人ではないし、宙を見据えるその鋭い眼差しは意味深に何かを察しているようだった。

"…どうと言われましても"

だが、質問の意味がわからず、私はそう答える事しかできなかった。

"彼奴らがどうしたのですか?まさかそれが彼奴らを逃がした理由にはなりますまい"
"直にわかる"
"…"

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