崑崙の章
第7話 「いっただっきまーす!」
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った、そういうことですか?」
「まあ、そういうことです。そんな自領の不始末、州牧になったばかりの劉表様には致命的ですよ。洛陽から首切られかねません」
「なるほどの……」
「で、あれば、俺の下手な話にも十分乗るだろう、と思ったんです。そうすれば逆に内外に自分を喧伝できますからね」
内外に?
「どういうことじゃ?」
「内……つまり、部下には『寛容だけではない、裏切るのであれば容赦はしない!』という引き締め。外には『いくら部下を調略しようとも、見破っているぞ!』と警告して、自身の存在を大きく見せることができます。俺がここに来るまでの劉表様の評価は、内政は優秀だが戦は苦手、です。周辺諸侯は、この件が公になれば実は侮りがたし、となるかもしれません」
「そこまで見越して……ですか」
「いやはや……」
わたくしと桔梗がお互いを見つめて溜息をつく。
そこまで見据えての行動なんて、武人の私など考えもよらなかった。
「……もしかして今回の話、わざと穴のあるように話したのではあるまいな。わしにはお主ならばもう少しやりようがあったと思うのじゃが……」
「………………まあ、ご想像にお任せしておきます」
「あら……まあ……」
つまり、完璧に理路整然というより、わざと下手な言い訳っぽく言ったと?
…………
確かに全てが彼の言いなりになれば、猜疑心の強い劉表様のこと。逆に反発心を生みかねない。
だけれども、北郷さんが隙を見せていれば、劉表様は北郷さんを見下してわざとその手に乗ることで、逆に情けをかけようとするかも……いえ、実際にした。
その温情を引き出すことも計算されていたと?
……なんて人でしょう。
「いやいや……俺にはあれで精一杯でしたよ。あんまり買いかぶらないでください」
「このっ! おぬしがそれを言うか!?」
そう。
彼は偶然居合わせたというだけで、桔梗の命を救い、その回復に方々を駆け回ってその代償すら受け取らなかった。
そして一つの国の危機に、簡単に策を出して無傷で賊を捕らえ、尚且つわたくしと桔梗の立場をも救った。
この人こそ……天の御遣いなのでしょう。
「北郷さん……本当にありがとうございますわ」
「いや……そんな大したことしてないですって」
そう言って、ほんのりと赤くなった顔で微笑む。
その顔がまた可愛らしい……
「賊を捕らえることができたのも、黄忠さんと厳顔さんのおかげですよ。俺は別に……」
「紫苑ですわ」
「は?」
北郷さんがきょとん、とした顔をする。
くす……
「わたくしの真名。紫苑です。そう呼んで下さいまし」
「あ、ああ……じゃあありがたく。俺は真名がないので……盾二でいいですよ」
「おう!
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