崑崙の章
第7話 「いっただっきまーす!」
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となりました、劉玄徳に仕えておりました」
「劉玄徳の……?」
「今は故あって旅をしております……たまたま知り合った黄忠様、厳顔様に助成させていただいた次第」
「ふむ……お主にも褒美をよこせ、そういうことかな?」
劉表は少しさげすむような目でこちらを見てくる。
褒美欲しさに声を上げたと思われたのだろう。
まあ、どうでもいいんだけどさ。
「いえ、そういうのはまったく必要ありません。そうではなく……黄忠様のことです」
「む?」
「黄忠様ご自身は、ひとたび劉表様の元を離れたにも拘らず、この白帝城の太守として、いわば国を奪った、そういうことになっております」
「…………」
「しかし、それは劉表様が黄忠様に命じていた策なのだとしたらどうなるでしょうか?」
「なに?」
俺の言葉に劉表は眉を顰め、黄忠さんは驚いた顔で俺を見る。
「劉表様はかねてより案じておられました……自身の部下に、獅子身中の虫がいるのではないか。それを憂いた劉表様は、信頼しておられる黄忠様に密かに命じます。『我が下よりしばし離れて慮外者を燻り出せ』と」
「……ふむ」
「そしてこうも伝えました。『万が一においては、太守より実権が必要になることもあろう。必要なときにはこれを提示して我が代理として事を成せ』、そうして渡されたものが……」
俺は文官へと目配せをする。
文官は、少し迷った後に懐から一通の書状を取り出す。
「劉表様……」
「む……?」
渡された書状を広げた劉表は、その文面を見て目を見開く。
「これは……全権代理書か」
「はい。それを以って黄忠様は、不正を行う太守の行動を見抜いて錦帆賊共々捕縛したのです……」
俺はそう言って頭を下げる。
劉表は、手の内にある『偽造された』書状をじっと見ている。
そう……あれは、俺が頼んで文官に作らせたもの。
俺は文官に三つの書状を頼んだ。
一つは、周辺の漁邑への命令書。
一つは、黄忠さんが以前治めていた夷陵への援軍要請書。(黄忠さん直筆の依頼書付)
そして、最後の一つがこの偽造証書だった。
「…………」
劉表の目は冷徹に光りながら黙考している。
これを怒りのままに破るべきか、これを利用するか。
若い人間ならばこれを破り捨てるだろう。
だが、年配で寛容であり、思慮深いとされる劉表の性格。
それゆえの、いわば賭けだった。
「………………」
劉表はしばらく経っても目線を上げずに黙考している。
ここでもう一押しするべきだろうか……?
「……劉表様。その書状ですが」
俺の言葉に、目だけがギラッと俺を睨む。
一瞬、肝が冷えたが、ぐっと堪えて平静を保ち、微笑む。
「実は、少々不備があ
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