崑崙の章
第7話 「いっただっきまーす!」
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まして……」
「我々文官を含め、白帝城の官民、全ての信任から黄忠様に一時的に太守をお預けしました」
わたくしの言葉を遮り、文官が頭を垂れて劉表様へと報告する。
「黄忠様のご高名はかねがね伺っておりました。援軍として来ていただいたにも拘らず、多大な迷惑をかけた厳顔様をお一人で賊の下に送るなど出来ませぬ! とはいえ、我らが兵を率いることも出来ず……責は私にあります。どうか、どうか黄忠様、厳顔様には、なにとぞご容赦を……」
「ふむ……」
劉表様が顎に手をやったまま、しばらく目を閉じて黙考しています。
わたくしは、ちらっと背後に目を向けました。
そこには一切喋らず、頭を下げている北郷さんがいます。
彼は、わたくしたちと共に劉表様の前に跪いたのですが……どうやって紹介しましょう?
「うむ。仔細、あいわかった!」
パン、と自身の太ももを打った劉表様が声を上げました。
わたくしは慌てて顔を前へと戻します。
「先に結論を述べておく。この件について、黄忠、厳顔、文官の処罰はない。逆に儂から褒美をだそう。よくぞこの白帝城を守ってくれた。礼を申すぞ!」
劉表様の言葉に、文官は「もったいないお言葉です!」と頭を下げました。
桔梗は「ご温情、感謝いたしまする」と再度頭を下げています。
「劉表様のご温情、この黄忠、心より感謝申し上げます……なれど、わたくしの褒美は辞退いたします」
「む? 何故だ?」
「わたくしは本来劉表様のご温情にてその旗の下を去った身……にもかかわらず、そのご温情を仇で返すように勝手に太守としてこの十数日ほどこの地を支配してしまいました。この行為は義にもとる行為です」
「……しかし、それはやむをえなかったこと。儂はそれを咎めようとは……」
「いえ、それでは悪しき前例が残ります。危急の際には、だれでも太守になって国を奪ってよいという……そんな事になれば、劉表様の風評は他国の嘲りとなるでしょう。それだけはいけませぬ」
わたくしの言葉に、ううむとうなる劉表様。
そう……これは罰せられるべきこと。
こんな無法の前例は残してはいけない。
「確かにその通りではあるが……とはいえ、お主を罰するつもりなぞ、儂にはないぞ」
「それでは周辺諸侯にも、民にも悪影響です。見せしめのためにも、何卒わたくしめに罰をお下しください」
「む……ううむ……」
劉表様が困惑した表情でわたくしを見る。
と――
「劉表様、発言をお許し願いたい!」
わたくしの背後で今まで無言を通していた北郷さんが、声を上げた。
―― 盾二 side ――
「む? お主は誰じゃ?」
「私の名は北郷盾二……このたび、西の漢中周辺に拠を持つ事
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