崑崙の章
第7話 「いっただっきまーす!」
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て、医師の立場はかなり低い。
また、治療に莫大なお布施を要求されることも少なくないのだから。
「はい。実際、わたくしもその場に居合わせねば信じなかったと思います。彼は鍼で厳顔の無数にある傷を瞬く間に癒しました。正直、妖術かとも思ったほどでした。ですが……我が友厳顔を救ってくれたことには違いありませぬ」
「ふむ……お主の言うことだ。信じてよいとは思うが、な」
そう言いつつも、どこか信じきれない様子で桔梗を見る劉表様。
わたくしとて現場を見ていなければ到底信じられない事なので、あえて無視をする。
「ともあれ、厳顔は回復してその原因を話してくれました。それは、こちらの太守が錦帆賊に攫われたという内容です。厳顔自身、その現場に居合わせ、太守を救い出そうとして大怪我を負ったとのこと」
「なんと……真か、厳顔?」
「はっ!」
劉表様の言葉に、ようやく顔を上げる桔梗。
「わしはかねてからの約定通り、劉表殿の領地からの援軍要請にて兵三千を率いて参りました。しかし、辿り着いて太守に面会すると、江賊との取引に邪魔だということで、その日に追い返されたのです」
「なんと……!?」
劉表様は、文官へと振り返る。
それを見た文官は、それが真実である、と頷いた。
「わしはすぐに兵を帰陣させようとしましたが、その際に我が友黄忠の伝言を受け、一人この白帝城に残りました。その向かう途中で太守が錦帆賊に連れ去られる現場を見て、取り戻そうとしたのです。結果は……能いませず、不覚にもこの身に深い傷を負うことになりましたが」
「ふむ……お主ほどの剛の者がそれだけの傷を負ったのじゃ。他の誰だったとて、一人で奪い返すことは叶わなかったであろう」
「はっ……」
再び頭を垂れる桔梗。
劉表様は、視線をわたくしへと向けて、話を促す。
「厳顔と共に白帝城へと参上した折、錦帆賊からの要求が届いておりました。そちらの文官から話を聞き、その運び手に厳顔が指名されておりました。その事で厳顔は一人でゆくと申したのですが……」
「……たった十人相手にも不覚をとった我が身です。相手は何百人と待ち構えているかもしれませぬ。それゆえ、白帝城の兵を動かす必要がありました。ですが……」
「厳顔の申すとおり、兵は必要。しかし、それを率いる将がおりませぬ。本来、ここを治めていた武官は劉表様と共に出払っておりましたゆえ……」
「うむ……黄巾討伐の為、手が足りなくてな。地方の武官まで連れ出したのは失敗だったか……」
劉表様が顎に手をやり、髭をもてあそぶ。
この方が自身の失態を自戒するときによく行う仕草だった。
「それゆえ、兵はおれども将がいない状況では防衛はともかく討伐は難しい。なれば、一時的にわたくしがそのまとめをと申し
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