崑崙の章
第7話 「いっただっきまーす!」
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―― 黄忠 side 白帝城 ――
錦帆賊の捕縛から七日。
わたくしは白帝城の臨時太守として、この王座の間にて頭をたれ、その前にて跪いている。
目の前には荊州の刺史にして、新たに州牧となられた劉表様が、その王座の席に鎮座していた。
王座の間に座る劉表……すでに六十を越える白髪の老人ではあったが、小柄ながらも威厳に満ち、柔和な顔つきながらもその眼光は鋭い。
「久しいな……黄忠よ」
「はい。劉表様におかれましては益々のご壮健、この黄忠、喜びに堪えません。遅ればせながら州牧の任に就かれました事、お祝い申し上げます」
「うむ……新しい肩書きとは申せ、今まで私兵だった軍だったが正式に軍事権を得ることが出来た。これで公式に兵を鍛えて、江賊どもを淘汰できる……そう思っておったのだが」
劉表は言葉を切り、ニヤリと笑った。
「まさか私が帰る前に、その江賊がいなくなるとは思わなんだ。苦労をかけたな……」
「いえ……わたくしの力ではありませぬゆえ」
「カッカッカ……まあいい。それで、だ」
今まで柔和であった顔が、突然険しくなる。
「何故、我が下を去ったお主が、我が領地で太守となっているか。話を聞かせてもらえるのだろうな?」
「はい……もちろんでございます」
劉表の言葉に、顔を上げて微笑む。
「まずは……事の起こりはわたくしが白帝城に立ち寄った際、偶然にも巴郡の太守である我が友、こちらにいる厳顔が近くに来ていることを知ったのがはじまりでございました」
そう言って、隣でわたくしと同じように頭を垂れて跪く桔梗を見る。
劉表様は、桔梗へと視線を向けた。
「ふむ……厳顔とお主は、確かに旧友であったな。お主の婚儀にも参加していたのを覚えておる」
「はい。わたくしは厳顔に面会するべく、彼女への連絡を待っていた為にこの白帝城に留まっておりました。その折、わたくしが宿泊している宿に傷ついた厳顔が尋ねてまいりました」
「傷ついた……? 見たところ大事無いようだが」
そう言って訝しげに桔梗を見る劉表様。
桔梗は、まだ自分が口に出すべきではないと、顔を伏せている。
「はい……その場に偶然居合わせました御仁が彼女の治療を行い、一命を取り留めました。そして次の日に彼が連れてきた医師により、厳顔を見る間に回復させました。劉表様は華佗という人物をご存知でしょうか?」
「いや……知らぬ」
「彼の者はごっど……五斗米道なる医師集団の一人とのことです」
「五斗米道……そういえば放浪している医師の中に死者すら生き返らせるといわれた者がいると聞いたことがある。戯言だと思っていたが……」
劉表様が首を捻るのも無理はない。
祈祷占いに頼る漢におい
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