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八条学園怪異譚
第三十四話 眼鏡とヘッドホンその十四
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「そこまで勉強されてるんですね」
「まあのう。古典から学べることは多いからのう」
「だからですか」
「読んでおる」 
 そうだというのだ。
「一回読むより二回、三回と読んでいくのじゃよ」
「教科書みたいですね」
「かつては教科書だったしのう」
 四書五経は科挙の重要な教典だった、かつての中国では全て暗誦出来るまででないと及第も及ばなかったのである。
「それもあるであろうな」
「そうですか」
「そうじゃ、まあとにかくその眼鏡とヘッドホンを付ければじゃ」
「座敷わらしが見えるんですね」
「実際にそれで見えるぞ」
 博士は顔を崩して笑って述べた。
「楽しみにしておくのじゃ」
「わかりました、それじゃあ」
「お借りしますね」
 愛実と聖花はこう返した。
「それで座敷わらしに会って来ます」
「あと泉も探してきます」
「私も。楽しみね」
 茉莉也は二人の前で笑顔で言う。
「久し振りに会えるのね、あの娘に」
「先輩にとってはそうですね」
「馴染みの相手なんですね」
「ええ、幼馴染みよ」
 それになるというのだ。
「あの娘はね」
「本当にずっと一緒に遊んでいたんですね、あそこで」
「そうなんですね」
「そうよ、保育園の時はね」
「ただ、よく覚えてますねそんな昔のこと」
「保育園の時のことなんて」
 二人はこのことについてもふと思った。だが愛実はここで思い出したことがあった、それはどういったものかというと。
「私達あまり覚えてないですけれど、いや」
「いやって?」
「聖花ちゃん私が男の子達にいじめられてた時助けてくれたわよね」
 こう聖花に言ったのである。
「小学一年の頃だったわよね」
「あっ、そうね」
「はじめて会ったのが幼稚園の頃でね」
「そうよね、他にも色々あったわよね」
「そう思うと覚えているみたいね、そういった頃のことも」
 愛実と聖花は二人で話す。
「じゃあ先輩もなのね」
「そうなのね」
「その思い出と再会する為にも行くわよ」
 茉莉也は二人の幼い頃の思い出を思い出してそこに浸ろうとしている二人に笑顔で声をかけた。
「いいわね」
「はい、それじゃあ」
「今夜にですね」
「女は常に積極攻勢よ」
 少し前の言葉では肉食系でいくというのだ。
「いいわね」
「それ恋愛の言葉じゃないんですか?」
「先輩の主張だと」
「何に対してもよ、前に前によ」
 二人にこう返す。
「じゃあいいわね」
「とにかく今夜ですね」
「保育園ですね」
 二人は茉莉也と共に博士から眼鏡とヘッドホンを借りた、そのうえで保育園に向かうことを決めたのであった、この日も泉を探す彼女達だった。


第三十四話   完


                    2013・4・
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