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ヘタリア大帝国
TURN79 天才の復活その六
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 レーティアは田中とデートを重ねているが相変わらずだった、焦点の定まらない目でぼやけた表情のままいるだけだった。
 服もジャージのままだ、しかし田中はそうしたことに気付くことはない、それでだった。
 夜に共に飲む小澤に笑顔でこんなことを言うのだった。
「もうあの娘と俺はな」
「恋人同士というんですね」
「ああ、そうだよ」
 まさにそうだというのだ。
「俺にもやっと彼女が出来たな」
「どうかね、それは」
 二人と共に飲む南雲がここで首を捻ってみせた。
「あたしの見たところ全然進展はないよ」
「この特攻野郎が思い込んでるだけかと」
 小澤は相変わらずぽつりと毒を吐く。
「こんなのだから今まで彼女いないんですよ」
「そうだろうね。悪い奴じゃないんだけれどね」
「はっきり言って馬鹿です」
 実に容赦がない。
「正直総統さんは田中さんを見ていません」
「それが違うからな」
 田中は自分でカップに日本酒を注ぎ込みながら言う。一升瓶はかなり減っている。
「あの娘はもう俺にぞっこんだよ」
「手を触れたことはありますか?」
 小澤は無表情で尋ねる。
「それは」
「手って何だよ」
「身体に触ったことは」
「馬鹿言え、そんなこと出来るかよ」
 田中はムキになって小澤に反論する。
「そういうのは結婚してからだよ」
「今時珍しい純情だね」
 南雲は田中の今の言葉にある意味感心した。
「こんな奴もいるんだね」
「はい、そうしたことは尊敬できますが」 
 何だかんだで小澤も田中は嫌いではないし敬意も払っている、だがだからこそあえてこうも言うのだった。
「正直恋愛のことがわかってないですl」
「そうだね。どう見てもね」
「手前本当に何時の時代の人間だ」
 また毒を吐く小澤だった、しかも無表情で。
「江戸時代かよ」
「随分言ってくれるな」
「戦友だからです」 
 ここでは率直に言う。
「とにかく私の見たところあの人は心ここにあらずです」
「じゃあ何処にあるんだよ」
「失われたものに」 
 それにだというのだ。
「そこにあります」
「そうだね。ドクツを負けさせたことでね」
 南雲も難しい顔で言う。三人でテーブルを囲んでソファーの上に置かれた酒につまみのスルメや漬物を
口にしながら話している。
「あの娘自信喪失してね」
「敗北に責任も感じています」
「何だかんだでまだ女の子なんだよ」 
 二十歳にもなっていない。
「それで栄光から敗北っていうのはね」
「衝撃であることは間違いありません」
「それでだよ、中々立ち直れていないんだよ」
「だから俺がよ」
 田中はまだ言う。
「デートに連れてってんだよ」
「ぼろくそ言ってますがそれは確かにいいです」
「ほら見ろ、やっぱりいいだろ」

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