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アイーダ
第二幕その六
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第二幕その六

「どうかここは」
「なりません」
 神官達も引かない。あくまで言う。
「ここはどうか」
「鎖か剣を」
 鎖ならば奴隷、剣ならば処刑だ。そういうことであった。
「御慈悲を」
「なりませぬ」
 彼等の攻防は続く。しかしここで民衆が加わった。
「ファラオよ」
 彼等もファラオに訴えかけてきた。
「ここは寛容を」
「御願いします」
 彼等は捕虜達に同情を示してきた。それは神官達の日頃の独善と強権を知っているからである。だからこそ彼等についたのだ。
「せめて彼等の命だけは」
「どうか」
 そうファラオに対して嘆願する。
「御願いします」
 アイーダは父の側に寄り添って言う。
「どうか私の国の者達を」
「助けて欲しいのか」
「そうです」
 ファラオに対して述べる。
「御願いですから」
「アイーダ」
 ラダメスはそんな彼女をずっと見ていた。アムネリスはその視線に気付いた。
「やはりあの方は私ではなく」
 まずは悲しみに心を覆われた。
「あの女を。やはり」
 次に嫉妬に覆われた。これが彼女の不幸のもとであるがそれには今は気付かなかった。気付くのは後悔に打ちひしがれた時であった。
「ファラオよ」
 アモナスロはまたファラオに声をかける。決して誇りを失ってはいない。その声を今敵の王にかけるのであった。そこには彼なりのエチオピアの王としての誇りと意地があった。
「どうかここは」
「なりません」
 しかしランフィスも言う。
「せめて奴隷に」
「いえ、それも気の毒です」
 民衆達もまた言う。
「御慈悲を」
「御願いします」
「わかった」
 彼等の言葉を全て聞いたうえで決断を下してきた。
「我等は勝った」
 顔を上げてまずそれを宣言する。
「はい」
 皆がそれに頷く。それは事実だった。
「それでは勝利者は寛容でなくてはならぬと思うが」
「ですが」
「いや」
 ランフィスが何か言おうとすると今まで何も言わなかった大臣達が動いてきた。既にラダメスの周りには軍人達がいる。
「ファラオの言われることはもっともであります」
「全くです」
 形勢が有利になったと見て彼等は捕虜達の助命に動いたのである。日和見を決めていたがここでようやく判断を下したのであった。
「だからこそ」
「そなた達も賛成なのだな」
「そうです」
「ここはファラオの寛容さを御見せする時です」
 彼等は口々に述べる。
「宜しいでしょうか」
「馬鹿な、敵に慈悲なぞ」
 それでもランフィスは反対しようとする。
「何の意味もない。ここは果断であるべきだ」
「お待ち下さい」
 ラダメスも言ってきた。
「将軍」
 ランフィスが彼を見下ろすと既に将兵は彼の周りにいた。それがどういうことなのか
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