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アイーダ
第二幕その六
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、わからない彼ではなかった。
「私はファラオの御遺志に従います。いえ」
 一旦首を振って述べる。
「私もその考えです」
 アイーダをちらりと見た後で述べた。その僅かな動きもアムネリスは見ていた。胸の痛みと憎しみに耐えられなくなっていたが今はそれを必死に隠していた。
「将軍、馬鹿な」
「慈悲は快いものとして神々に届きエジプトとファラオに幸福をもたらすでしょう」
「その通りだ」
 ファラオもラダメスの言葉に満足した顔で頷く。
「だからこそだ。よいな」
「そしてファラオよ」
 この機会を待っていたかのようにラダメスが一歩進み出てきた。片膝をつき恭しく述べる。
「私の願いですが」
「何だ?」
「どのような名誉も財産もいりませぬ」
「いらぬと申すか」
「はい、私が欲しいのはファラオの慈悲です」
 頭を垂れそう述べてきた。
「貴方の御慈悲こそが」
「そしてその願いは」
「捕虜達の解放です」
「馬鹿な、そんなことをすれば」
 ランフィスはそれに首を横に振った。
「またエチオピア軍は攻めて来る。何の解決にもならない」
「ですがランフィス殿」
 ラダメスはここで立ち上がった。ランフィスを見上げて言う。
「敵の王アモナスロは死んだではないですか。彼さえいなくなれば」
「将軍」
 ランフィスは決してラダメスが憎くはない。むしろその才と私のない純真な心を愛している。彼個人としてはラダメスにはいとおしささえ感じている。しかし彼としては認められなかったのだ。その立場と考えから。彼もまた自分に対して、自分なりにエジプトに対して嘘はつけなかった。

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