第二話
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ホアンにはレベロがヤンを謀殺するのを止める権力はない。ただ遅らせるだけのコネはあった。まずレベロの秘書が意図的に、軍部への命令を遅らせた。次に軍内部に干渉した。ヤンを守るという名目はここで強く働いた。こうして時間を稼いでいる間にホアンはレベロを止めるための権力、つまり自分が最高評議会議長になるための手はずを整える必要があった。
ホアンは武力を持ってヤンを救うつもりはない。あくまで政治家であるから思考には向きづらかった。しかしその逆もある。政治的にではなく武力によってヤンを救おうとするグループだ。言わずもがな、元ヤン艦隊のメンバーである。彼らには白兵戦において同盟軍最強のローゼンリッターのほぼ全員が含まれており、市街地戦では無類の強さを発揮するだろう。
ホアンと元ヤン艦隊のグループ、これらが意思疎通を図らず独自に行動をしたため、後者にとっては予想の範囲内であっても前者にとっては最悪の事態を招くことになる。
レベロは今日の議会に参加するために地上車に乗り議会に向かっていた。その日、彼は特別機嫌が悪かった。数日前から機嫌が悪かったがその日は特別だった。
まずここ数日、秘書官が渡した書類をほとんだなくしたり、指示道理に動かなかったりあきらかに調子がおかしい。今まで体調不全も、仕事上の間違いもなく完璧だっただけに余計に気になった。
次に軍の自分への対応がおかしい。これの原因はおおよそ推測できる。彼らはヤンの逮捕に反対なのだらう。現統合作戦本部長のロックウェルは乗る気のようだがいかんせん下がついてきていないのが明白だった。とはいっても数日遅れただけでヤンの逮捕は既に完了しておりもうそこまで問題はない。
レベロは機嫌が悪くても周りに当り散らすほど出来の悪い人ではない。地上車の中ではだまって仕事をしていたが強制的に中断されられた。地上車はコントロールを失い左右にゆれ、何事かと外に向けられた目は一瞬だけ炎に包まれた二台の護送車が見えた。
レベロは壁に激突しようやく停止した地上車から自ら出て、自分がどのような立場に置かれたのかを理解した。
本来現れるはずの議長が欠席のまま議会は始まった。それをいかぶしみながらホワンは議長の不信任案を出した。レベロを支持する議員と自分を支持する議員、数の上では前者がわずかに多い。しかし何より一番多いのはトリューニヒトが辞任した後に議員になったどっち着かずの議員だ。レベロが議長を辞めさせられ自分が議長になって代わる可能性は70%ほどだろうと見込んでいた。
翌日、賛成多数でホアンは議長として任命された。レベロはわずか数ヶ月で議長を辞めることとなった。レベロが泥舟と評した同盟の船頭になろうとするような物好きはホアンぐらいしかいなかった。
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