第一物語・後半-日来独立編-
第四十一章 秘めし決意《1》
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神相手にならない方がおかしい。
しかし、こうも早くなるものなのだろうか。
魔法術師の知識が乏しいため正確に判断出来無いが、とにかく今はチャンスだ。
だから騎神は無理矢理、自身を束縛しているこの魔法から脱出した。
力を込め、抑え切れない程の力を出しただけの単純な脱出だ。
やはりと言うべきか、騎神を束縛出来ることは凄いことだが抑え込める力は弱かった。
苦しむ魔法術師の元へと近付き、冷たい金属の手で彼女を掴んだ。
「――んぐ!」
苦しみからか声を漏らす魔法術師は、顔色が悪いまま騎神を見る。
握り潰すことなど容易だが、握る潰すようなことはしない。
あくまでも敵の戦力から強者を省くための一種のお取り役であり、戦場へ参加するためではないからだ。
握る魔法術師を目線の高さに持ってきて、
『どうやら終わりのようですね』
「うう……、かなりしんどい……」
『体温が通常よりも熱くなっているのは分かっています。体温で言うと、四十度は越えていますね。こんなんでよく戦えたものです』
「君が弱かったから、かな?」
『確かに僕は弱いです。こうして騎神を操っていても魔法術師相手にこのザマですしね』
相手を気遣うなと上司に言われているが、目の前の魔法術師を見ると助けたくなり、高度を下げる。
甘いですね、と自分で思う。
確かに敵なのは事実だが、お互い敵になってしまったのは宇天の長を救うと彼方が行動したため。
そして、こちらは黄森に従順な態度を示すため。
本当ならば、辰ノ大花も宇天の長を救出を手助けしたい。
だが目の前には神州瑞穂の中心がおり、その前に自分達はひれ伏せている。
表立って行動出来れば本当はいいのだが、今までの戦いの様子で言い訳は出来るだろう。
だから優しく、握る左腕部の冷却装置を通常よりも強く動かした。
「え……? なんで、あ……こんなこと、するのかなあ……?」
冷たさを感じながらマギトは苦しみのなかで、目の前の騎神に問い掛ける。
意味が分からない。
自分は敵なのに、どうしてこちらの身を気遣うのかと。
空を下がるなかで、操縦者は言い返す。
『僕らは弱い。目の前の敵が強いと知れば手も足も出せなくなる。だから、貴方達みたいな人が羨ましかった。何時も笑っていて、何も縛られていない君達が』
「どういうこと? 焼けそうだから、簡単に言ってよ」
冷却装置を更に強め、
『なら簡単に言います。僕達の長を、委伊達・奏鳴を――救ってください』
「救う? 君達の長を? なら、なんで行かないの?」
『辰ノ大花では黄森に勝てません。ゆえに従うしかありません。しかし日来なら、きっと――』
きっと、
『力や権力を前にしても屈することはありません』
長を救ってほしいことは解ったが、その後が
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