暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
戦場を貫く刃
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黒のロングマフラーは見間違いようがない。
おーおー、と声がして振り向くと、立ち上がったキリトが額に手を当てて今までリーファが見ていた方向を見つめていた。
「さらに速くなってるなぁ、あいつ。あれじゃあ、もう付いてける奴なんていないだろ」
「そうですね。私もそこそこ足については自信があるのですが、あの域はもはや数値の違いではないのかもしれません」
割合のんびりとしたキリトとカグラの会話に、リーファは頭の芯がかぁっと熱くなるのを感じた。思わず立ち上がって、たちまち襲ってくる空気の壁に多少よろけながらもキリトの胸倉を引っ掴んで食って掛かる。
「何でそんなに余裕なの!?あんな大人数に一人で挑もうなんて、それはもう戦いじゃないよ!ただの自殺と同じだわ!」
言うだけ言って翅を広げようとするリーファを、ふわりと押さえつける手があった。
心配ありません、とカグラは言った。
眼も痛くなるような純白と緋色の巫女服を着た女性は言う。
「この程度のハンデは、今のレンにとっては無にも等しい物ですので………」
どこか誇らしげに。
コートの橋をバタバタはためかせながらレンは、眼下を睥睨した。眼下に広がる草原は、もはやただの鮮やかな緑の塊となっている。
テクスチャが綺麗に溶け落ち、後ろへと放射状に流れていく。
それを見ながらレンは、遠いところまで来てしまったな、と特に何の気負いもなく思った。
今はなきあの鋼鉄の魔城、そこにログインしたあの日から数え切れないほどの昼と夜を過ごしてきた。
そのほとんどは両手を血に染めた暗黒の時間だったが、しかしその中でもレンホウというキャラクターは確実に強くなっていった。時々、自分でもぞっとするほどの速さで。
今のレンならば、その気になればフィールドの地形ですらも変えることができる。その時、いかに多くの命を奪おうが関係ない。
そして、それは同時に最大の快楽でもあった。
どれほどお高く、強気に出ている奴でも、HPが真っ赤になった途端に、全員が全員面白いように喚き出す。それがたまらなく────
楽しくて
愉しくて
タノシかった。
しかし、それを止めてくれたのは一人の女性だった。
空のような綺麗な青髪をなびかせ、大して強くもないのに、のんびりとした陽だまりのような笑顔を振りまいて、自分を底のない真っ暗な泥沼から引っ張り上げてくれた。
そのおかげでレンという一個人はここにいられる。あのまま殺人を続けていれば、きっと自分は自分でなくなってしまっていただろう。
じりじり、と加速しすぎた時の弊害として、手の指の先が吹き荒ぶ風のせいで冷えてきた。
無意識に手を摺り合わせ、は
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