暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
戦場を貫く刃
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衣の少年は唸る。
次いで、右の人差し指を軽く伸ばして、何かを図るように宙空にかざす。
「一キロか。向かい風だけど、なんとかなるか」
その言葉の、あまりの気楽さにリーファは息を詰めた。まるで、本当にどうにかするかのような言葉。
レンはのんきに笑い、一同に背を向ける。
瞬間、向けられたその小柄な背中から、ぞっとするほどの圧力が放たれた。
思わず立ち上がりかけていたリーファの膝から力が抜け、漆黒の体毛に深くめり込む。
分からない。全く何も解からないが、リーファには判る。
この少年は、イラついている。果てしなくイラついている。何に対してかはわからない。だけど、イラついている。
息もできずにその背中を見つめていると、唐突にレンは言葉を発した。
「カグラとキリトにーちゃんは、殺し損ねた奴の処理をお願い。手は決して出さないでね。巻き込んじゃうから」
何もなかった。
その声には、身体全体から放射されている圧力も、何もなかった。
いやそれどころか、感情さえもその言葉の中にはなかった。
怒りも、悲しみも、喜びも、蔑みも。
何も、なかった。
ただただ透明で、透き通っていた。
「……それからリーファねーちゃん」
「は、はいっ!」
唐突に振られたリーファの裏返った声に、レンは背中を見せて振り向かないまま少し笑った。
「諦めた時ってさ。その先に待ってるのって、《無》なんだよ。勝ちや負けじゃないんだ。諦めたらそこで終わるって言うけど、それは間違い。終わるって事は、そこで負けが確定するってことだからね。だけど、諦めたら、そこで止まっちゃうんだよ。ピタリと、ね」
「と、止まっちゃう?」
「そう。勝ちでも負けでもない。ただ、《停止》する。それは途轍もなく苦しいことだと思うよ」
無論リーファにはその言葉の真意など、さっぱり理解できない。
しかし、その言葉はリーファの心のずっと深い部分に突き刺さった。
その痛みに一瞬動きを止めたリーファを、やっとレンはちらりと見て────
クーの背から、姿を消した。
「…………………え?」
反応すらも、遅れた。
何の音もなく、何の予備動作もなかった。
ただ、綺麗にリーファが瞬きした瞬間に合わせたかのように、掻き消えた。
「えぇっ!?」
急いで背の端っこまで這っていって、周囲に眼を凝らした。
すると何と言うことか、翼も使わずに弾丸のごとき勢いで空中を滑空する血色のコートが遥か彼方に見えた。
専門のアイテムか魔法も使わない肉眼では、それが単なる自然のオブジェクトか否か判断できないほどのギリギリの解像度だったが、尻尾のようにはためく漆
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