キャリバー編
百二十三話 年末の大イベント
[1/7]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
2025年 12月28日 日曜日 午前5時51分
桐ヶ谷家
「……ふぁ、眠みぃ……」
もぞもぞと布団を退けて、ベッドから一人の青年が起き上がる。ボサボサとそこら辺に跳ねる髪を掻いて起きた青年は、布団から出ると同時に身を震わせる。
「さっぶ……」
まあ、十二月も下旬である。寒いのも当然だろう。
と、青年は布団に戻りたくなる衝動を何とか押さえ込みつつ、立ち上がり、着替えだす。
長い袖のジャージを着て、玄関から野外にでると軽く準備運動をしてジョギングを始める。
最早涼人の身体はSAO前の調子を……と言うか、それ以上の物を得ており、その足取りは軽やかだ。
以前は町内半周だったが、今は一周を三十分で走れる。以前和人とこの話をして、ドヤ顔で勝ち誇ったのは中々楽しかった。
「ほい、とーちゃく」
再び戻って来た桐ヶ谷家の前で立ち止まり、クールダウンして家に入る。着替えと共にある程度汗を拭いて、洗濯機の下へ……
「よし、コレで……「わー!間に合った!」……懲りねぇなぁお前……」
溜め息混じりに振り向いた所には、やはりと言うかなんと言うか、道着に右手に竹刀、左手に洗濯物と言う奇妙な姿の直葉が立っていた。
「あはは、いや〜何か忘れちゃうんだよね〜って、あ」
と、其処で直葉は何かに気がついたように一瞬上向いて、警戒した目線で涼人を睨んだ。
「りょう兄ちゃん、後ろに居て」
「……はぁ?」
「今度こそ手も足も出せないように、後ろに居てって事!ほら!出る出る!」
「おわっちょ、押すなって……」
言いながらも、直葉によって涼人は洗濯機のある洗面所の外に出されてしまった。
直葉はしっかり涼人と洗濯物の間に立つと、ドラム式の洗濯機の中に次々に洗濯物を投げ入れて行く。
「〜♪」
そんな彼女の様子を見ながら、涼人は若干呆れたように呟いた。
「なぁ、スグさんよぉ……」
「え?何?」
「……そんなに嫌なら、投げなきゃ良いんじゃね?」
「…………」
至極真っ当な意見を言った涼人に、直葉は若干顔を朱くして、更に洗濯物を投げ入れる。
「それは……ヤダ。何か、負けた気がする」
「なんじゃそりゃ」
苦笑気味の言葉を背中に受けつつも、直葉は洗濯物を投げ続ける。そうして、例のブラジャーに手を伸ばし。投げた。
くるくると放物線を描いて飛んでいくそれは、直葉の絶妙なコントロールで見事に洗濯機の中へと吸い込まれ……る、直前で、突如張られた白い凧糸に引っかかり、その動きを止めた。
「……は?」
ゆっくりと、その凧糸を目線で伝って行く。それは洗濯機の前にピンと張られ、壁についたタオル掛けやその他突起物を軸にして直葉の後ろへと延びていて……
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ