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鋼殻のレギオス IFの物語
二十話・後編
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。対戦相手の……あー」
「ガハルド・バーレーン」
「そうそいつ! 病院でそいつが言ったらしい。事故に見せかけて殺されかけたって。あの試合、最初から手加減されて仕組まれたとかどうとか」
「ホントかよそれ……」

 疑心の目を向けてくる友人たちに男は語調を強める。

「ただ言うだけなら嘘かもしれん。だが態々手加減されたって言うか普通? 自分が及ばず遊ばれたって宣言するようなもんだぞ。負けた上でそんなこと俺なら言えねぇよ。嘘ならな」

 酒の残りを一気に男は煽る。

「僅かだが一部の武芸者の意見の中には最後の方に感じた剄に違和感があった奴もいるとよ。試合の映像みんなで集まって見て検証してる奴らもいたけど……ウプ、闇試合とか傭兵とかの事聞いてるとマジな気もしてくるな」
「ガハルドって現役トップクラスだろ」
「決勝まで行ったんだ。天剣除けば現役二位じゃね?」
「ああ。もし噂が本当ならレイフォンって奴、ありえないほど強いっていことだろ。二位の奴を相手に遊んで軽く殺せるんだから」
「とんだバケモンだな。金積めば人殺しとか幾らでも引き受けんじゃね?」
「流石にそれは無いだろ……。後ガハルド死んでねぇぞ」

 言いながら一層疑心の目を彼らは深める。
 正直な話探れば探るほど今回の事件の張本人レイフォン・アルセイフについての後ろめたい噂は出てくる。だというのにそれを否定する証拠や証言の類は未だ一切聞いていない。疑うのもしょうがないと言える。
 疑問といえば噂の規模も変だと男は思う。広がる早さが些か早すぎるような気もするのだ。まるであらかじめ準備されていたかのように。
 そう思いながらも「まあ、人が人だからな」と男は納得する。天剣という存在はグレンダンの住民にとってそれだけ大きい。
 それに、噂が残らず本当だからこそ広まったのかもしれない、とさえ男には思える。
 
 店員に酒を注文して男は周りを見る。
 聞こえてくる声からはこの事を話しているのは自分達だけでないことが分かる。もしかしたら正義感の強い過激な者たちによるレイフォン・アルセイフの排斥運動まで起こるかもしれない。自分にそこまでの熱はあまりないが、天剣に焦がれていた若い武芸者や一般市民からの反発は強いだろう事は容易に想像できる。
事実が分からず噂が先行すればいらぬ想像が掻き立てられ存在しない話が入る余地さえ出来る。そうすれば明確な形にはならずともその時間が長いだけ排斥の機運が高まることもある。

 憧れを踏みにじられた怒りは強い。それが汚されることを嫌う人もいる。
決して手の届かない一般人や純粋に憧憬の気持ちを持つだろう子供からしたら衝撃はより一層大きいだろう。
感情の落差は、高ければ高いだけ心に衝撃を与える。
 
「少なくとも天剣就任の話はご破産確実かね」

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