第三十三話 合宿の終わりその十五
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「普通の免許証じゃ乗れないから」
「あれもですか」
「動かせないんですね」
「さっき貴女達が話していた戦車もね」
それもだというのだ。
「特別な技術が必要よ」
「まあ戦車はそうですよね」
「どう見ても特別の中の特別ですから」
「そうした意味でも特別なんですね、戦車って」
「同じ車にしても」
「しかも高いのよ」
値段の話にもなる。
「一両辺り十億円よ」
「そんなの普通の人が絶対に買えませんね」
彩夏は十億と聞いてすぐにこう先生に返した。
「というかロールスロイスより高いですね」
「ロールスロイスが一億よ」
世界一の高級車と比べても桁が違う、これが日本の戦車だ。
「凄いでしょ」
「戦車って高いんですね」
「日本のはね。一年辺り二十両しか造らないし」
製造台数が少なければそれだけ高くなる、戦車もまた然りだ。
「余計に高いのよ」
「ううん、十億の戦車ですか」
「殆どダイアモンドですね」
「というか戦車ってそんなに高いんですね」
「凄いですね」
「だから。日本の戦車はよ」
ここで話が限定された。
「アメリカだと五億だから」
「あれっ、半分ですね」
「全然違いますね」
「EUだともっと安いわよ、ドイツの戦車とかね」
戦車王国であるドイツでこれだ、日本はまた別格なのだ。
「本当に安いから」
「日本車って安いことが取り柄の一つだったんじゃ」
景子は日本車が評判のいい理由の一つを話した。
「そうですよね」
「安くて燃費がよくて性能がいいね」
「それが日本車ですよね」
「戦車はまた違うのよ」
こうした意味でも例外だった、戦車は。
「日本の兵器は高いのよ」
「それで性能悪かったら抗議ものですね」
琴乃は十億という値段から突っ込みを入れた。
「それこそ」
「多分性能はいいから」
「多分ですか」
「多分ね、それは安心してね」
「だったらいいですけれど」
「ちなみにここで作っているトラックは自衛隊にも売っているから」
その戦車を使っているところにもだというのだ。
「色々なところにね」
「じゃあ高いんですか?」
「トラックにしては安いわよ」
「安いんですか」
「乗用車よりは高いわよ」
大きさも違うし用途も違う、それではだった。
「それでもトラックしては安いわよ」
「それで性能もいいんですよね」
「このトラックって」
「だからいいのよ。日本車よ」
日本車なら、というのだ。先生は自分の国の技術にも誇りを見せてそのうえで確かな笑みで言うのである。
「見るのよ、いいわね」
「見るって。今見てますよ」
琴乃がここで先生に問うた。
「それでもですか?」
「ええ、一旦バスから降りるわよ」
それから見ると言うのだ。
「そうするわよ」
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