第26話 わたしも一緒に
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口にする有希。
もっとも、
「それに、俺が玄辰水星の名前を。――彼女の名前の方を口にした瞬間の彼女の不自然な反応についても明確な答えが欲しい、と言う事やな?」
俺の言葉に、少し考えた後に微かに首肯く有希。ただ、既に俺が少々、彼女の思考を読んだ様な事を為したとしても驚くような気を発する事は無くなりましたが。
「輪廻転生。この言葉の意味を知って居るか?」
行き成り、一番重要な部分の質問を行う俺。ただ、今までの彼女。長門有希と言う少女が示して来た知識の量から考えると、こんな初歩的な質問など意味はないでしょう。
案の定、あっさりと首肯いて答えてくれる有希。
「この星の思想の中に存在する死生観。一度死亡した生命体の魂が何度も生まれ変わって来る現象の事を指し示す。しかし、情報統合思念体が集めた情報内には、明確に輪廻転生が起きたと表現出来る事象は存在しない」
そして、冷静な有希の答えが返された。確かに、明確に。科学的な事象として輪廻転生が起きたと表現される事象が報告された例はないとは思います。
何故ならば、普通の輪廻転生の場合は、前世からの記憶の継承などは行われませんから。
「あのムカデの毒に因り生と死の狭間を彷徨っていた時に、俺は妙にリアルな夢を見た」
その夢に出て来た少女の名前が綾で有り、蓮花だったと言う事。
そして、その綾と言う名前の少女が、何故か、玄辰水星と名乗った女性の少女の頃の姿だと言う事が当たり前のように理解出来た。
「それで、一応、鎌を掛ける意味から、少し仕掛けてみただけ」
まして、有希には都合の悪い情報を遮断していた情報統合思念体では、本当に収集した全情報を有希に公開していたとは思えません。
何故ならば、輪廻転生などの情報は、この星の現実界と繋がる異世界。神界や、その他の存在が暮らす世界の情報に直結する可能性が高い情報です。故に、彼女に対しては恣意的に遮断されていた可能性も高いと思いますから。
「あの夢が俺の前世だったと言う確実な証拠はない。しかし、俺の妄想が産み出した偽りの記憶だと言うには、あの時の綾……。玄辰水星の対応は有希の知っての通りの内容」
俺の言葉に、少し考えた後に、有希は僅かに首を上下させた。
科学的な論拠は何一つ上げる事は出来なかったけど、それでも、輪廻転生など存在しないと完全に否定出来る情報も存在しない、と言う事ですから。
それに、有希から見ると、俺たちは仙術と言う謎の技術を行使する人間です。彼女が知って居る狭い範囲内での地球人の規格では理解出来ない人間で有る事は既に知って居るはずですか。
そんな人間が目の前に存在する以上、輪廻転生など存在しない、……と一刀の元に切り捨てられる訳はないでしょう。
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