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ヴァレンタインから一週間
第26話 わたしも一緒に
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 ――――
 いや、拒絶ではない。彼女、玄辰水星から感じるのはいたわり。そして、達観。
 これは、俺を止めようとして、しかし、彼女の言葉では止められない事に気付いたと言う事。

 あの時と同じように……。

「ホンマに、すまなんだな、玄辰水星」

 色々な意味を込めて、再び同じ言葉を口にする俺。
 まして、彼女との別れは確か……。

 彼女が微笑みを魅せながら首を横に振った。但し、その表情ほど彼女の心が平静だったとは限りませんが。
 そして、もう一度俺を見つめた玄辰水星。その瞳は、元の……。この部屋に入って来た当初の物へと戻っていた。
 かつてお互いが交わし合った瞳ではなく、親しい知り合いたちに向けるそれと同じ瞳に。
 その瞬間に俺と彼女の間に存在する、住むべき世界の違いと、そして、お互いの間に流れて来た時間の差を感じずにはいられなかった。

「それじゃあ、また明日ね」

 それだけ告げてから立ち上がり、振り返って扉の傍に立つ有希を見つめる……綾。
 その綾と有希の視線が短く交錯した瞬間、有希から驚きに似た気が発せられる。そして、綾と俺の間で視線を彷徨わせた後、静かに。しかし、強く首肯いてくれたのでした。

 これはおそらく、綾と有希の間で……。


☆★☆★☆


 一瞬の感傷にも似た想いを残して、玄辰水星。いや、今の俺からすると、有り得ない記憶の彼方に存在した少女、水輪綾が去り行き、有希の寝室に、冬の夜に相応しい静寂が訪れていた。
 しかし……。

 僅かに、口角にのみ浮かべる類の笑みを浮かべる俺。
 そう。かつて、この世界に存在していた俺と、
 今、この有希専用の寝台の上に存在する俺。

 どちらが、本当の俺なのかが判らなく成りましたから。

 そんな長い夜に相応しい堂々巡りと成るしかない、……答えを得る事の出来ない自問自答を開始して居た俺の思考を遮るタイミングで、カチャリ、と言う音の後、この寝室の主が、彼女に相応しい希薄な存在感と共に入室して来た。
 その後、そうする事が当然と言うように、俺が上体のみ起こして座っている寝台の横に置かれた椅子に腰かける有希。

 そして、二人の視線が同じ高さで今、交わった。

「何か聞きたい事が有るのか?」

 俺を見つめたまま、微妙な気を発し続ける有希にそう問い掛ける俺。
 但し、彼女の疑問に関しては、判っている心算でも有ります。玄辰水星が去り際に、彼女に何を託して行ったのかも含めて。

 ほんの少しの空白。これは、明らかに躊躇いの証。
 しかし、

「あなたが何度か目を覚ました時に口にした名前。蓮花(レンファ)や、綾と言う名前の女性に関して教えて欲しい事が有る」

 ……躊躇った割には、かなり思い切った台詞を
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