第26話 わたしも一緒に
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は手の打ちようがない状態なのです」
……と、そう自らの現状の推測を口にする。
但し、実はひとつだけ方法が有るには有るのですが……。
それでも、時間を弄る。現在の状況は、おそらく時間さえ使えば回復する類の状態だと思いますから、それならば、壺中天のような異世界を作り上げて、その中の時間の流れを早めると体調を回復させるのは簡単だとは思います。
しかし、それはあまりにも現実を歪める行為。現実を歪めすぎると、何処に悪影響が現れる可能性も少なく有りません。
もし、余計なトコロに歪みのような物が現れると、以後、その歪みの修正に追われ続ける事に成りかねません。
そうなるぐらいなら、現状のままで羅?星の相手をした方がマシですから。
其処まで考えて、この部屋に戻って来てから、ずっと部屋の入り口付近に立ったままで俺と玄辰水星のやり取りを見つめる少女に、再び視線を移した。
そう。その歪みと言う物が確実に俺を襲う、と言う事が判っているのならば、万全の状態で羅?星の相手をする為に、魔将アガレスの能力を使用して時間を引き延ばします。元々、かなり勝算が低い戦いに成る事が確実な戦闘の勝算を、これ以上低くする訳には行きませんから。
しかし、もし、その現実を歪めた反動が彼女に襲い掛かった場合は……。
「……難しいですね」
かなり難しい顔をした後、首を左右に振ってそう答える玄辰水星。
発明神にして、医療神の側面を持つ玄辰水星でも、今回の件は流石に難しかったのか、答えは芳しい物では有りませんでした。
まして、霊道と言う物は曖昧模糊とした存在で、その穢された場所の特定などと言う事も出来る訳は有りませんか。
「そうですか」
差して残念そうな雰囲気を見せる事もなく、そう答える俺。
それならば仕方がないでしょう。そう考えながら、
「わざわざ、呼び出した挙句、無駄足を踏ませて……。すまなんだな、綾」
最後の最後で、さらっと流すように、彼女の名前を口にする。
あの頃の俺……夢の中の俺と同じ口調で。
その瞬間、当代の玄辰水星。俺の知って居た頃は水輪綾と言う名前だった元少女から、何とも言えないような気が発せられる。
今にも泣き出しそうな。しかし、陰の気に染まった気ではない、複雑な気。
やや潤んだ瞳で俺を見つめる玄辰水星。そんな仕草はあの頃のまま。そして、彼女の方から何か言葉を発しようとして――――
しかし、彼女はその後、ゆっくりと首を振った。
これは……拒絶か?
俺は、玄辰水星を能力の籠った瞳で見つめる。彼女の心を完全に掴むのは今の俺では無理。しかし、彼女の考えを知りたい。俺は今、無性にそう感じていた。
――――――
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