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ヴァレンタインから一週間
第26話 わたしも一緒に
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当然、吊り橋効果や、式神契約の際のルーンに因る影響の可能性も有ると思います。
 しかし、

「ありがとうな」

 抱き寄せた彼女から、甘い香りが俺の鼻腔を(くすぐ)り、
 何故か、俺の腕の中にしっくりと来る彼女の柔らかな身体と、妙に落ち着く彼女の心音を自らの身体で感じた。

 そして、そのまま彼女の耳元に、

「ええで。一緒に行こう」

 そう、いともあっさりと伝えた。

 抱き寄せた彼女に直接触れた部分から、彼女の心がダイレクトに伝わって来る。
 それは間違いなく驚き。
 確かに、彼女からしてみると、俺がもう少し彼女の同行を渋ると思って居たはずですから。

 何故ならば、俺が有希を羅?(ラゴウ)星が顕現する異界化空間に連れて行きたくない理由が、彼女の事を傷付けたくない、でしたから。

 しかし、

「最初から言って有るはずやな。
 何故、俺に着いて来たいのか、自分が考えて居る事を俺に伝えてくれたら良いって」

 俺は最初に言った言葉を再び口にする。
 あの時の彼女には口にする事が出来なかった言葉を口にした彼女に対して。

 そうして、

「それに、さっきの有希の言葉を否定する事は、今の俺には出来ない。
 何せ、オマエさんの目の前で、羅?(ラゴウ)星ドコロか、ムカデを相手にして殺され掛けたんやからな」

 俺は、其処まで彼女の耳元で囁いた後に、彼女を身体から少し離し……。それまで彼女が座っていたベッドの脇に置かれた椅子から、俺が横に成って居たベッドの上の開いたスペース。つまり、俺の傍らに座らせた。
 そして、最初から比べるとかなり近い位置に存在するように成った、やや作り物めいた彼女の容貌に少し笑い掛けた。

 もっとも、これは照れ隠しの笑い。あまり、格好の良い物ではない。

「ホンマにすまなんだな、有希。ムカデに単独で相対したのは、流石にムチャやったかも知れない」

 結局、最初の言葉に戻る俺。ただ、俺としては、あの時の判断はアレ以上の判断は無かったと未だに考えて居るのも事実ですが。
 要は、俺自身の能力が足りなかった。ただ、それだけの事でしたから。

 絶対の能力が有れば、相討ちなどと言う無様な結果と成りはしなかったのですから。

 有希が少し迷ったかのような空白の後、微かに首肯く。
 そして、同じ寝台の上に腰を下ろした二人の間に、微妙な雰囲気の時間が流れて行く。

 何か妙な雰囲気。但し、この奇妙な空白の意味は……。

「何か、聞きたい事が有るのか?」

 彼女の雰囲気を察して水を向ける俺。
 そう。この雰囲気は何か聞きたい事が有って、しかし、聞き辛い事が有る時に人が発する雰囲気。

 俺の言葉に、矢張り、少し迷ったかのような雰囲気を発し
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