第26話 わたしも一緒に
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っとも、羅?星を俺自身の手で再封印出来なければ、其処から先の俺の未来は存在しなくなるのですが。
有希が、滅多に見せる事のない表情で俺を見つめる。
これは、決意。もう二度と引かない者の決意。
「――わたしも明日、あなたと一緒に連れて行って欲しい」
彼女がそう口にした。理由は判るし、連れて行くのは簡単。
そして、この羅?星の復活で出来上がる異界に侵入可能なのは、おそらく俺と有希の二人だけ。伝承に残されて居る登場人物だけに成ると思う。
ただ、羅?星が顕われるのは明日。……つまり、俺は丸々一日の間眠って居た、と言う事に成るのか。
俺の視線を受け、しかし、俺の答えを待たずに、彼女は、淡々とした普段の口調のままに更に続けた。
「あなたが倒れた時、わたしの心の中に今までに発生した事のない感覚が起こった。
朝倉涼子を情報統合思念体の指示に従い処分し続けた時に感じたものとは違う、もっと大きな喪失感。
初めての感覚では有った。ただ、たったひとつだけ判った事が有る」
彼女は、俺を瞳の中心に据えたまま続ける。
起伏に乏しい彼女独特の口調で。
「もう二度と感じたくはない。そう思ったのは間違いない感覚だった」
しかし、彼女の決意に相応しい想いを言葉に込めて……。
「そして、もうひとつ判った事が有る。
わたしはあなたが傷付き、倒れる所は見たくない。けれども――」
ここまで一気に話し続けて来た有希が、ゆっくりとひとつ息を吐いた。
これは、自らの考えを口にする為の空白。
「同時に、わたしの知らない所であなたが傷付き、倒れる事は、もっと考えたくはない」
その言葉が有希のくちびるから発せられた瞬間、彼女の姿に重なる異なる少女たちの姿。
異なる……。今はもう何時の会話だったのか思い出せないような、遙かな記憶の彼方に存在する、少女たちのくちびるから発せられる異なった声。
そして……。
そして、同じ意味の言葉。
ならば、続く言葉も……。
「わたしは未だあなたに感謝の言葉さえ告げてはいない。
もしも羅?星との戦いの後にそのまま……。そのまま、あなたが元々暮らして居た世界に帰って仕舞ったのなら、わたしはあなたに別れの言葉を告げる機会さえ失って仕舞う事と成る」
彼女の言葉がすべて終わった後、少しの沈黙が二人の間に流れる。
二人の間に存在するのは、夜と静寂と人工の光。
右腕を伸ばし、そっと彼女を抱き寄せた。
軽い驚き。しかし、彼女からそれ以上の抵抗のような物を感じる事はない。
言いたい事は色々有ります。確かに、彼女の今の感情は単なる刷り込みに等しい感情の可能性も高いでしょう。
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