第26話 わたしも一緒に
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間違い有りません。
そんな手負いの状態の俺に、普通に考えるのならば世界の命運を託す事などが出来る訳は有りませんから。
但し……。それでも尚、俺にはやらなければならない事が有ります。神話……この世界の西宮に残されている伝承通りに事態を推移させない限り、消す事の出来ない呪いが彼女に降りかかって来る可能性が有る限りは。
「身近な人間を失った人間がどうなるか、有希は知って居るか?」
俺のかなり真剣な視線の後に発せられたやや意味不明の問い掛けに、少し迷った後に、微かに首を上下させる有希。
そう。この時の彼女は間違いなく俺以外の人間にも判る形で答えを返して来ました。それ程の強い思いを、彼女はその身近な相手を失った時に感じたと言う事なのでしょう。
しかし……。
成るほど。彼女も、経験が有るのならば……。
「……判るな。残された人間の心の動きは」
あの時にこうして置けば良かった。こうして居たのなら。たら、れば、たら、れば、たら、れば、たら、れば。
結局、ずっとその思いに囚われ続けるだけ。
そんな後ろ向きな状況に陥るのはもう沢山。
立ち止まったままで、ずっと動けずに居る状況など……。
「もう沢山」
そんな状況に陥るぐらいならば……。
「わたしの事を気にする必要はない」
俺の生命を賭けた大博打を打つ方がまし。そう言い掛けた瞬間に、有希が俺の言葉と思考を遮った。
出会いの夜から今までの間、一度も発せられた事のない口調で。
そう。今まで同種の言葉を発して来た時のような、無機質な平板な言葉使いなどではなく、初めて、彼女自身の優しい心に触れた。
そう言う口調で……。
そして、
「わたしは、あなたが傷付く事を望んではいない」
……と、続けたのでした。
思わず、笑って仕舞うような簡単な答え。
俺が彼女を見つめるのならば、彼女も俺を見つめ返していると言う事。
彼女……有希が人間の生と死について理解している事に関しては、薄々気付いては居ました。
そして、先ほど、残された者の気持ちが判るとも答えた。
それならば答えは簡単。彼女も俺と同じように、俺が消える……死亡する事を恐れたとしても何ら不思議な事はないと言う事。
しかし、それ故に、
「オマエさんの考えが判った以上、有希に害が及ぶ可能性が有る事。人魚姫のルーンと言う物を放置する訳には行かない」
誰が止めようが、何が起きようが、今回の事件は俺の手で解決する。
その上で、彼女の左手甲に現れたルーンが消えるのならばそれで良し。消えないのならば、消えるまで考えられるだけの方法を試して見るだけ。
彼女の答えで、この想いが更に強く成っただけです。
も
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