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ヴァレンタインから一週間
第26話 わたしも一緒に
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「今はゆっくりと休んでいて欲しい。その間に――」

 彼女はゆっくりと……。俺を納得させるかのように、本当にゆっくりとそう言った。
 その言葉に含まれて居るのは安堵。彼女の今の心を強く表している。

 そうして一呼吸。まるで、自らの精神を落ち着かせるかのように、ひとつ息を吐き出した後、俺が何か言い出す前に自らの言葉を続けた。
 出会いの夜から一度も変わらない起伏の少ない彼女の心の中に、少し強い感情の色を隠して。

「すべてが終わって居る」

 ………………。
 …………。

 優しさと言う名の沈黙の妖精が世界(ふたりの空間)を支配し、俺の視線と、彼女のメガネ越しの視線が、二人の丁度中心点で小さく絡み合った。

 その瞬間。

「すまない。それは出来ない」

 俺は、少し居住まいを正した後に、そう、有希に対して答えを返した。彼女の視線に耐えかねて根負けした訳でもなく、ごく自然な雰囲気のままで。
 そんな俺の答えに対して、こちらも普段通りの表情で俺を見つめ返す有希。その感情の部分も、大きな揺れのようなモノは存在しない。
 つまり、彼女の方も、この俺の答えを完全に予想していたと言う事に成る。

「有希や、そして、水晶宮の仲間たちが俺の身体の事を考えて、そう言ってくれて居る事は理解出来る」

 一応、そう答えて置く俺。
 そして、呼吸を整えると同時に精神の安定を図り、もう一度、彼女を見つめる俺。
 室内灯の蒼白い光を彼女の容貌を構成する重要なパーツに反射しながら、彼女はただ黙って俺を見つめ返すのみ。俺の言葉に口を挟んで来る事もなく、ただ、俺が言葉を続けるのを待つのみの姿勢。

 少し哀しげな雰囲気をその身に纏いながら……。

「それに、その事については素直に嬉しいし、有り難い事だと思っても居る」

 俺の答えに対して、少し迷った後に微かに首肯いて答えてくれる有希。この迷いの意味も、これに続く俺の言葉の内容に察しが付いて居るから。
 それでも尚、俺が素直に感謝の言葉を口にした部分は受け入れてくれたと言う事。

 これは、彼女の優しさの表れだと思います。

 但し、有希の優しさとは違い水晶宮の思惑の方は、もう少し辛辣な理由が存在する可能性も有ると思いますけどね。

 何故ならば、元々今の俺の能力は、水晶宮に所属する能力者の中で跳び抜けて優秀な能力者と言う訳では有りません。
 その俺が今回の事件の解決に重要な役割を担う事が許された理由は、この西宮に残されて居た伝承が、俺や有希の存在と被る部分が大きいから。

 しかし、その一点を除けば、今の俺は単なる駆け出しの仙人に過ぎず、今回、化けムカデを龍種が倒すと言うやや規格外の働きを見せたにせよ、その所為で回復に時間の掛かるダメージを受けた事は
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