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『曹徳の奮闘記』改訂版
第九十四話
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いた。

 この球体の陶器の中身は魚油である。元呉軍兵士達は陶器を投げて魏軍の軍船を油まみれにさせた。

 そこへ火矢が突き刺さって停泊していた軍船はあっという間に火が回って炎上している。

「ぎゃあァッ!?」

 魏軍兵士達は火を消そうとするが逆に火炎に飲み込まれていき統率は完全に崩壊している。

「華琳様ッ!! このままでは船団は全滅しますッ!! 陸に上陸して退避しましょうッ!!」

「……やむを得まいわ。全軍、船を捨てて陸地へ逃げよッ!!」

 華琳はそう決断し、生き残っている魏軍兵士達は次々と軍船から退船していく。

 しかし、火の回りが早く逃げられずに焼死する兵士達もいた。熱さから逃れるために水の中に飛び込む兵士もいたが、鎧が重く酸素を求めて海面に泳ごうとするが力尽きて沈んでいく者もいた。

 そして夏候淵が何かを見つけた。

「湾内に王の旗の軍船……王双が向かってきますッ!!」

「……私を見つけたようね」

 華琳は苦笑した。

「華琳様、殿は私が務めます」

 夏候淵がそう言ってきた。

「分かったわ。頼むわよ秋蘭」

「御意」

「必ず来るのだぞ秋蘭」

 そして夏候淵は僅か三百の手勢を率いて小型の軍船で長門の軍船に向かった。



「左から小型軍船ッ!! 全部で七艘ですッ!!」

「足止めだな。舵このまま、右砲戦用意ッ!!」

 四斤山砲に砲弾を装填して小型軍船に照準をした。

「一番撃ェッ!!」

 一番砲が火を噴き、小型軍船に直撃して乗っていた魏軍兵士達を吹き飛ばした。

「く、我々が蟻のようだな……」

 小型軍船の先頭を航行する秋蘭はそう呟いた。そこへ二番砲が撃って至近弾となる。

「浸水ッ!!」

「王双軍に当たるまで持ちこたえればいいッ!!」

 長門の軍船は四艘を沈めたが残り三艘は軍船に取りついた。

「乗り込めッ!!」

「ちぃ、夏候淵の野郎……弓隊射てッ!!」

 俺は舌打ちをしつつ弓隊に射撃をさせる。乗り込もうとする魏軍兵士を一人ずつ射殺していく。

 それでも夏候淵以下十数人が乗り込んできた。

「夏候淵ッ!! 最早魏軍の負けだ、素直に降伏してくれ」

「……断る。我が魏は華琳様の野望を達せられるまで倒れるわけにはいかんのだッ!!」

「ッ!?」

「伏せろ長門ッ!!」

 そう言って夏候淵は俺に矢を放ったが、焔耶が咄嗟に俺の頭を伏せてくれた。矢は後ろにいた兵士の喉に命中して兵士は息絶えた。

「済まん焔耶ッ!!」

「今度、何か奢るんだなッ!!」

 ほんとに……焔耶は最高だな。

「焔耶……」

「……ん、分かった」

 俺は焔耶に小声で用
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