答え
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込んで行く。男達の数は最初に確認した時の半数程にまで減っている。何人かは外に出ようとシャッターを開けようとするのだが、ビーストはそういう人間を選んで捕食している為に未だに外に出られないでいる。そしてアリサは穴の近くで気を失っていた。しかも位置的には触手を挟んだ向こう側だった。
その光景にオレは怖じ気づいてしまった。いくら常人離れした身体能力を持っていようとも、生身でビーストに勝てる訳が無い。何より、初めて怪獣やビーストの恐ろしさを感じてしまった。目の前の圧倒的な暴力に身体と心が萎縮してしまった。逃げたいと心が叫んでいるのに、足が一歩も動かない。右の方で爆発音が聞こえ、GUYSの人達が突入してきて攻撃を開始した。触手はそれを嫌がっているが穴に戻る気配がない。
「きゃあああ!!」
いつの間にかアリサが意識を取り戻し、自分の置かれた状況に驚いて悲鳴をあげる。その悲鳴で気が付いたのか、触手がアリサに向かって動き始める。GUYSの人達がそれを止める為に更に銃撃を激しくするが、触手は倉庫の隅にあったコンテナを投げつけた。それに巻き込まれて何人もの隊員が負傷し、それを救助する為に弾幕が薄れる。そして邪魔が少なくなった触手はアリサに近づいて行く。
「いやあああ、たすけてえええええ!!」
アリサの叫びにオレの身体は動き出す。
「アリサ、今行くぞ!!」
一直線にアリサの元に駆け出しながら落ちていたサブマシンガンを拾い上げ、最も脆そうな触手の先端を撃ち続ける。触手が怯み、一旦穴の中に姿を消す。その隙に弾が切れたサブマシンガンを捨て、アリサを抱き上げて外に向かって走りだす。
「光!?」
「喋るな、舌を噛むぞ」
アリサを気遣う余裕は無い。急いで外まで、GUYSの人達の所まで逃げなくてはならない。
「!?少年、急げ!!」
リーダーと思われる人が叫んで来た。おそらく後ろから触手が追って来ているのだろう。気配からして逃げ切れない。
「アリサを頼みます」
抱きかかえていたアリサをリーダーらしき人に向かって投げる。同時にオレの身体に触手が巻き付いて来た。そのままどうする事も出来ずに穴の中へと引きずり込まれ、大きな口が見えて来た。なるほど、触手と思っていた物は舌だったのか。死がすぐそこまで近づいているのにも関わらず、オレの心は先程までとは打って変わり穏やかだった。アリサの助けを求める声を聞いた時、オレの中のズレていた歯車が噛み合わさった。例え弱くても、誰かを救いたいという気持ちに嘘を付くわけにはいかない。オレには誰かを救えるだけの力がある。なら、それを振るえば良い。自分の手が届く限りの人達を。足りなければ他の人達の力を借りて。簡単な事だ。それに気付かなかったオレはただの間抜けだ。だから、やり直そう。今、この時から。
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