アインクラッド 前編
噛み合った歯車
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だが、その上から獰猛な笑みを上書きすると、マサキも対抗するように剣速を上げる。
「せああぁぁぁっ!!」
「らああぁぁぁっ!!」
ここまで来た以上、最早小細工は通用しない。今出せる最高速で双方の刃が閃光を撒き散らしながらお互いの体に肉薄し――。
空気を切り裂く音を残して、二つの刃が振り切られた。周囲に四散する二色の光の破片が戦いの激しさを物語る。
二人のHPが同時に減少を開始。七割、六割、五割五分……。
――そして、二人のバーに表示されたドットが同時に五割を切った、その瞬間。
二人の中央でDRAW!! の文字が輝いた。
「あー! 勝てなかったぁーーッ!!」
デュエルの結果を確認したトウマが、叫びながら路上に横たわった。マサキは蒼風を鞘にしまうと、振り返って大の字のトウマに微苦笑を刻みながら尋ねる。
「それで? 試験結果はどうだったんだ?」
その言葉に、寝そべっていたトウマは上体を起こすと、体をマサキに向ける。
「……ああ。ありがとう。何となくだけど、やっていけそうかなって思えた。……ま、あんなチートスキルと戦って引き分けだったんだから、俺のほうがプレイヤースキルは上だってことが分かったしな」
「馬鹿言うな。俺はあのスキルを手に入れたばかりなんだぞ? 使いこなせるはずがない状態で引き分けなんだ、プレイヤースキルは間違いなく俺の方が上だね」
言い合うと、二人は声を上げて笑い合った。ひとしきり笑い合うと、マサキが差し出した手をトウマが掴んで立ち上がる。
「それじゃ、改めてよろしく、ってことで」
「ああ」
トウマが握り拳を胸の前で掲げると、マサキも応じた。
数ヶ月前は何かに阻まれるようにぶつかりあうことができなかった二つの拳は、今、ゆっくりと近付いていき――。
そして、すれ違った。トウマの体がぐらりと揺れ、前に倒れる。必然的にマサキに寄りかかる体勢になる。
「おい、大丈夫か? おい!」
「……あれ、何だかフラフラして……」
「おい! しっかりしろ!! 馬鹿な……ここは圏内だぞ……!? 第一、こんな症状見たことが……」
必死に肩を揺らすが、要領を得ない受け答えしか帰ってこない。
とにかく一度宿まで運ぼうと、マサキはトウマに肩を貸した。
その時。
「……ヒック」
「ヒック?」
すぐ横のトウマの口から、しゃっくりのような声が漏れた。不審に思ったマサキがトウマの顔を覗くと、顔が頬まで赤く染まっている。しかも、不自然な刺激臭が時折ツンと鼻を突いてくる。
「……お前、まさか酔ってるんじゃないだろうな……?」
マサキが恐る恐るそう尋ねた瞬間、それまで俯いていたトウマの顔がガバッとこちらをむいた。
「うるへー!
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