アインクラッド 前編
噛み合った歯車
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つと、その軌道を追うように走り出した。この投剣には麻痺毒が塗られている。毒のレベルは1だが、マサキが一撃加えてお釣りが来る程度動けなくなるだろう。かといって、避けたりパリィしたりすれば、迎撃態勢が整わない状態でマサキとぶつかることになる――はずだった。
「おいおい、マサキどうした? 一体どこ狙ってるんだよ?」
マサキの手から放たれた投剣は、トウマの遥か数メートル右へと飛んで行く。これをマサキの失投と見たトウマは投剣から目を切り、向かい来るマサキに全神経を注ぐ。
だが、マサキは口元を獰猛に歪めると、まだかなりの彼我距離があるにもかかわらず停止し、蒼風を右下から左上へ、逆袈裟に斬り上げた。すると、淡く煌く刀身がほぐれ、暴風となってトウマを直撃。その風自体にダメージはないものの、突風に煽られたトウマは一時動きを止めざるを得ない。
風刀スキル特殊技《神渡し》。刀から攻撃力のない突風を発生させる技。
「く……おぉッ……!」
一瞬体を持っていかれそうになったトウマだったが、自慢の筋力値で何とか耐え忍び、再び接近するマサキに迎撃の刃を向けようとする。
「左に気を付けな!」
「何を言って……うぉっ!?」
マサキの言葉に誘われて微妙に左に寄った視界が、自分に飛翔してくる銀色の物体を捉えた。弾道的には当たるかどうか微妙だったが、頭で判断する前に体が反応してしまい、上体を反らしてしまう。その一瞬後に目の前を通過していく銀色の刃――マサキが先ほど投げ、あさっての方向に飛んでいったはずの投剣。それが《神渡し》の突風によって弾道が変わり、トウマを再び襲ったのだ。
そして、驚愕の色を浮かべるトウマに、マサキは待ってましたとばかりに追い討ちをかけた。ライトエフェクトを放つ蒼風を握り締め、最高速で迫る。
「!! そういうことかよ、クソッ!!」
こちらの狙いに勘付いたらしいトウマが吐き捨てた。既に蒼風を振りかぶったマサキに対し、遅ればせながら《ブラスト》でカウンターを試みる。
「絶対に迎撃不可能」。もし今の状況を見れば、十人中十人がそう言うだろう。何せ、今から技を出すのでは、いくら攻略組といえど圧倒的に時間が足りない。《ブラスト》が届く前に攻撃を受けるのがオチだ。
だが、トウマは諦めなかった。自身の持つ意識の全てを腕の動きに集中させ、剣速に最大限のブーストをかける。
「せりゃああぁぁぁぁぁっっ!!」
――もっと。もっと速く!
腕と繋がる神経が灼けるような感覚の中で、トウマは更なる力を腕に込めた。その力を速度に変えて、大剣はマサキに向かっていく。
さしものマサキも、今の状態から反撃されるとは思いもしなかったのだろう、ポーカーフェイスが崩れ去り、驚愕の色が浮かび上がる。
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