アインクラッド 前編
噛み合った歯車
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はまたもや反応を変え、「そっか……」という溜息に似た声音と共に椅子にもたれた。天井に向けられた両の瞳は、しかし視線の延長線上のどこにもピントを合わせていない。
「どうした? そんな風に悩むなんて、お前らしくもない」
マサキが言うと、トウマはこれまた珍しく苦笑を浮かべ、今度は視線をテーブルの上、冷めかかったソテーへと移した。どこか遠くを見つめるような眼差しで、ポツリポツリと独白を始める。
「いや、俺……何度も親友親友って言ってたけど……。結局、マサキのこと何にも知らなかったんだな……って思ってさ」
「別に、不思議でもなんでもない。むしろ初対面の相手に自分の情報を網羅されているほうがよほど不気味だ。……それに、知らないのならこれから知っていけばいいのさ。時間は有り余ってる」
素っ気無い言い方の言葉だったが、トウマの心にはしっかりと届いたようで、トウマの瞳が再び焦点を捉えた。その爽やかな顔立ちに、ようやく似つかわしい笑顔が戻る。
トウマは爽やかな笑顔を少々悪戯っぽいものに変え、魚をナイフで切りながら話し出す。
「そっか……そうだよな。……それに、マサキの彼女だってこれからできるかもしれないし」
「……何故そうなるんだよ」
「だってそうだろ? もしこの先マサキが必要に迫られれば、マサキは彼女を作るわけなんだしさ。それに、一層のボス戦でパーティー組んだアスナとか……、後ほら、何だっけ? 最近話題になってる、えーと……」
「“モノクロームの天使”か?」
「そう! それ!」
マサキがその単語を口に出すと、間髪いれずにトウマが食いついた。
「そういう美少女が揃ってるんだから、色気にやられたマサキが急に心変わりしてリア充街道を歩き出すかもしれないだろ?」
「何だ、そりゃ」
その言葉にマサキはプッと吹き出した。同じように笑うトウマと視線が交錯し、二人は更に声を出して笑い合う。
そして、マサキは自分の言葉遣いがほんの僅かだけ崩れていることに気が付いた。視線を落とすと、胸の中に懐かしい暖かさが広がっていくのが実感できる。
「……なあ、マサキ。……一つだけ、頼みがあるんだ」
マサキが胸中に湧いた懐旧の情に浸っていると、ふいに低く抑えられた声が鼓膜を揺すった。マサキが視線の高さを声の元に合わせると、またもや先ほどとは打って変わったトウマの真剣な表情が目に入る。
トウマはマサキの視線を確認すると、ゆっくりと息を吸い、そして緊張の糸が張られた声と共に吐き出した。
「俺と……デュエルしてくれ」
店員の恭しい礼を後ろ背に浴びながら店を出ると、夜の空気が体を包んだ。初春の少し肌寒い風が店前の通りを吹き抜け、頬に残る粗熱を奪い去る。月も星も存在しない天井に覆
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