アインクラッド 前編
噛み合った歯車
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音だ」
「…………」
とりあえずは解説を最後まで聞くことを選んだのか、トウマは目線をこちらに向けて続きを促しつつ右手のスプーンでスープを飲んでいる。スープの味が相当気に入ったらしく、そうしている間にも右手の動きを止めることはない。
マサキは若干の苦笑を口元に刻むと、続きを話し始めた。
「……お前が攻撃を受けていたときだけでなく、俺が最初に喰らったときさえも、風切り音は聞こえなかった。これはブレスなどの遠距離攻撃などと仮定した場合にはありえない。が、突進ならば話は別だ。これはそれなりに有名な話だが――梟の翼は高い消音効果を備えていて、滑空中ならばほぼ無音になる」
「ってことは……」
「そう。音がしないということは、つまり攻撃方法が滑空による突進だということの証拠になるわけだ。……そして、そこまで分かれば後は風の向きや強さ、当たった場所などから相手の位置と未来の攻撃地点・時間を予測すればいい」
言い終えると、マサキはスープの後に運ばれてきた料理に手をつけた。そして二口三口味わったところで、向かいの料理が一切手をつけられていないことに気付く。
マサキが視線を上げると、つい先ほどまでテーブルマナーなどお構いなしに喰らい付いていたトウマが何やら考え込んでいた。時折マサキの耳に「顔はいいし……」だの「でも非常識だしなぁ……」だの、トウマから発せられたであろう言葉が届く。
そして気味の悪い呟きが数十秒に及び、気になったマサキが問いかけようとして声を出す直前、突如こちらに向き直ったトウマからの質問が飛んだ。
「……マサキってさ、恋人とかいねーの?」
「……話題の飛躍が著しすぎるんだが」
ソテーされた魚を刺したフォークを、口に入る一歩手前で止めたマサキは、微妙に眉をひそめながら答えた。トウマは後ろ頭を右手で掻きながら口を開く。
「いや、だってさ? マサキって頭いいし、顔だってクールでインテリ風のイケメンだし……彼女の一人や二人、いてもおかしくないじゃん? 今頃マサキの病室で二人が顔合わせて、どっちがマサキを取るか修羅場勃発……とか?」
「とか? じゃねえよ。いつから俺は二股かけてる前提になった? ……まあいい。彼女はいない。そしていたこともない。以上だ」
「……マジ? 何で?」
テーブルに身体を乗り出し、食い気味に訊いてくるトウマ。既にその両手にはフォークとナイフは握られておらず、100パーセントの興味を話に向けている。
「何でと言われてもな。敢えて理由をつけるとするなら……そう、必要なかった。それだけのことだ」
「……何か納得。いかにもマサキっぽい考えだよな、それ」
「……悪かったな」
マサキは顔をしかめて不機嫌さを演出すると、口元に留まっていた魚を口の中に押し込んだ。すると、トウマ
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