第十八章
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は佐久間に期待した。しかし、奴はまるでカタツムリみたいな動きしかみせなかった。それでは間に合わない。私の苛立ちは頂点に達した。所詮、佐久間には無理だった。だから佐久間を捨てた。犠牲になってもらう他なかったんだ。」
この言葉が終わるか終わらないうちに、外で銃声が響き西野の額に穴が開いた。そこから一筋血が流れ、後の屏風が真っ赤に染まった。西野の見開かれた目は誰かを凝視している。そして、西野の体は後ろに仰け反った。
飯島は、咄嗟に右に飛んだ。銃弾は飯島を追うように何発も発射され、一発が香織の腰に命中した。きゃーという叫び声が響いて、香織も倒れた。パジャマに血が広がってゆく。
飯島は、銃撃が止んだ隙に、香織を玄関横の応接室に引きずり入れた。喉に指を当てると鼓動はある。どうやらショックで気を失っているらしい。奥で人の声がする。警察に連絡しているようだ。
飯島は部屋を出ると、僅かに開かれた扉から外を窺った。男が、門扉を乗り越え道路に飛び降りた。飯島も玄関から飛び出し、植え込みを走り抜けた。大きな庭石に駆け上り、一気に塀を飛び越し、男の行方を窺ったが、影も形もない。
角まで走り、そこから通りを見ると、片足を引きづり、佐久間が歩いている。振り返りつつ車に乗り込んだ。助手席に入ったということは、竹内が車で待機していたのだろう。車はエンジン音を轟かせ走り去った。飯島は立ち尽くすしかなかった。
翌日の夕刻、飯島は章子の携帯に電話をいれた。殆ど衝動的にその番号を押したのだ。どうしても話がしたかった。ぽっかりと開いた心の空洞を理解してくれるのは章子しかいなかった。受話器を握り締め、飯島はその声を心待ちにしていた。
「もしもし、手塚です。どちら様ですか。」
懐かしい章子の声が響いた。飯島が名乗ると、章子は溜息をつき、ことさら冷たい口調で答えた。
「あなた、よく電話できたわね、散々私に恥をかかせておいて。それにまだ勤務中よ。」
「ああ、分かっている。兎に角、ご免、あの時、女房に逃げられて最悪の状況だった。女房は妊娠していた。俺の子供じゃあない。医者に調べてもらったら、俺は種無しだった。そんな時、君から電話があったんだ。」
「なる程ね、漸く謎が解けたわ。貴方が何故あんな怒り方をしたか。」
「ところで、お腹の子供は元気か。」
暫く沈黙が続いた。
「堕胎したの。」
と言って深いため息をついた。そして少し興奮したように言った。
「全く、それまで順調に行っていたのに、突然、愛しの君が現れるんだもの。佐久間と離婚してから、今勤めている会社の人とお付き合いしていた。相手もバツ一だし、結婚を前提に付き合っていたの。貴方が現れてからも、ずるずると関係していた。恐らくその人の子供だったんだわ。でも、その人とも別れるしかなかったの。」
と言って、さめざめと泣いた。そ
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