第十七章
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ら車の方を見ると、銃口は飯島に向けられており、次ぎの瞬間、銃声とともに火を吹いた。しかし不思議と当らない。誰かが守ってくれているのか。お袋か?などと悠長な思いが過ったが、今はそんなことを詮索している場合ではない。男が車から降りてきたら最後だ。
飯島は、拳銃をホテルに置いてきたことを後悔していた。銃弾が撃ち尽くされた。カチッ、カチッという金属音が響いた。そして意外にも、いきなりアクセルが踏み込まれ、車は唸りをあげ全速力で疾走した。飯島は、転がって車道に出た。
車はあっというまに小さくなった。ナンバーなど読めるはずもなかった。車は、青から黄色に変わったばかりの交差点に突っ込んで行く。その間に信号は赤に変わった。タイヤの軋む音が響く。
突然、ビルの角からトレーラーの先端が顔を覗かせていた。急ブレーキが踏まれ、車は蛇行しつつ、そのままトラックに突っ込み火花を放った。車はボンという音とともに燃え上がった。飯島は全速力で走り、近づいていった。
トラックの運転手が車から飛び降りた。火の勢いはもはや止めようがないほど激しい。運転手が燃える車からドライバーを引きずり出している。
飯島がようやく辿り着くと、運転手が男にジャンパーを被せている。ジャンパーを取ると黒焦げの男が肩で息をしている。苦しそうに顔を歪め、うーうーと呻き声を上げている。南である。飯島は走り寄り、叫んだ。
「南、南。何故なんだ。何故こんなことをした。」
運転手が言った。
「知っている人か。あんた、見ていただろう。こいつが突っ込んで来たんだ。信号は青だった。証言してくれるだろう。」
飯島は南の背中を抱き上げて、なおも叫んだ。
「南、何故なんだ。何故こんなことをしたんだ。」
南の口が僅かに開かれた。
「飯島?ああ、なんだ、飯島じゃないか。お前、何故こんな所にいる。こんなところで何をしている。」
意識は朦朧としている。飯島が再び叫んだ。
「何故なんだ、何故こんなことをしたんだ。」
南の視線はさ迷い、意識は混濁したままだ。わなわなと震える唇から微かな声が漏れた。
「俺は利用されただけなんだ。俺はやりたくなかった。だけどあいつが、あいつが。」
「あいつとは誰なんだ。」
「か、か、会長だ。俺は会長に操られただけだ。お前の左遷だって会長の指示だ。」
「えっ、会長だ。何で会長が出てくるんだ。」
「会長が、俺を利用したんだ。あいつは、俺を利用し尽くした。」
「おい、何を言っているんだ。お前は正気なのか。」
南の首から力が抜けて、がくっと飯島の腕に落ちた。飯島は、南の頭をコンクリートの上に静かに置いて、合唱した。そして立ちあがると、駅に向かって駆け出した。後ろで運転手の叫けぶ声が聞こえる。
「待ってくれよ。あんたの証言が必要なんだ。頼むよ。逃げないでくれよ。」
飯島は、頭が混
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