第十七章
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るように言ってくれ。それから、向田の携帯の番号を教えてくれないか。」
「ええ、いいわ。ちょっと待ってて。ええと、」
だいぶ手間取るかと思ったが、香織は番号を諳んじた。飯島は電話を切ると、すぐさま向田に電話を入れた。飯島が名乗ると、向田は、さも驚いたような声を発した。
「おやおや、お元気ですか、飯島さん。拳銃の使いごこちはいかかです。アーフターフォローもしませんで申し訳ございません。」
「余計な話しをしている暇はない。おい、今、香織さんにお前のことを密告しておいた。お前が、佐久間に協力しているってな。そして、すぐにお前の親父さんを通じて飯田組の組長にもそのことが伝わる。」
「おい、おい、待てよ、俺は佐久間とは関係ないと言ったはずだ。」
「惚けるな。俺は箕輪ほど甘い人間じゃない。いいか、よく聞け。これ以上余計な真似をするな。これは佐久間と俺の問題だ。」
「馬鹿な、俺は佐久間に協力などしていない。」
「嘘もいい加減にしろ。今、張っている左耳の欠けた奴が新聞を見ているが、俺を意識しているのは見え見えだ。お前の手下だろう。」
向田が息せき切って言った。
「飯島さん、俺を信じろ。片耳の欠けた奴なんて俺は知らない。そいつは佐久間の仲間かもしれないが、俺は本当に知らないんだ。俺は箕輪さんと約束した。友人を裏切らないと。そのことだけは信じてくれ。」
飯島は携帯を切った。そして歩き出す。振り返ると男は新聞を丸めて飯島の後を付いてくる。飯島が立ち止まり振り返る。飯島が見詰めているのに気付き、男も立ち止まった。
飯島は男に向かって歩を進める。男は呆然と立ち尽くす。飯島が駆け出す。すれ違いざま、鳩尾に右拳を叩き込んだ。男はその場にうずくまる。飯島は何事もなかったように、その場を立ち去った。
飯島は山手線で品川に向かった。昨日、用心のため新たなホテルに移ったばかりである。品川駅東口改札を出て周囲を注意深く窺った。人影はまばらで帰宅を急ぐ数人の勤め人が、飯島の前を歩いている。線路沿いの道から直角に曲がり広い通りに出た。
品川駅東口は再開発が進み、駅前は高層ビルが立ち並ぶが、その北側は下水道施設が大きな一画を占めている。高い塀に囲まれ、遠く2百メートル先で国道3号線にぶつかる。飯島は向田の手先を潰してやったことで緊張が解けていた。
しかし、飯島の後方から一定の距離を保ちながら一台の黒い車が後を追いながらやってくる。車は、しばらくすると少しづつだが距離を縮めている。飯島の後方30メートルのところでスピードを上げた。
飯島は、かすかなエンジン音に気付き後を振り返った。無灯火の車が迫っていた。咄嗟に歩道の植え込みの陰に飛んだ。銃声が響いた。二発、三発。どうやら、新しい隠れ家も奴らは知っていたようだ。向田が組員を動かしているのだ。
植え込みの間か
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