第十六章
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諾々とペンをとった。うな垂れて反省の色を示すしかなかった。俺は今の地位を失うことを恐れたのだ。
俺は慎重に行動するとともに、仲介役を置いた。秘密を守り、俺に代わって彰子にメッセージを届け、逢瀬のセッティングをする男だ。それが竹内だった。竹内の俺に対する忠誠心は本物だと思っていた。
最終的には香織に嗅ぎつかれ、彰子とは分かれるはめになったが、竹内との秘密の関係は続いた。つまり子飼いのスパイのような存在に仕立て上げたのだ。竹内を資材物流センター長に抜擢したのも俺だ。竹内は俺への忠誠心を示すべく全力を尽くした。
そんなある日、竹内がある情報を持ち込んだ。佐久間が現社長に対して復讐しようとしているというのだ。この情報は竹内の情報源から寄せられたもので、未だ噂に過ぎなかった。それでも、竹内はこれで佐久間を辞めさせる口実が出来ました、と笑った。
その時、俺は、一瞬、奇妙な思い、邪念に捕らわれたのだ。俺は竹内に、佐久間に接近し、何をしようとしているのか、もっと深く探るよう指示した。その答えが返ってきたのは一月後のことだ。電話の向こうで、竹内が笑いながら言った。
「奴は、狂っています。私を信用して打ち明けてくれたのですが、常務の奥さんの香織さんをホテルに拉致して陵辱すると言っています。私に、手伝って欲しいと、香織さんを犯している場面をビデオや写真で撮ってくれって言っているんです。」
長い沈黙があった。そして、佐久間の復讐の話を聞いた時に抱いた奇妙な思いが、輪郭を持ち始めた。その思いとは、家庭を顧みず遊びまわり、自由奔放に男を漁る妻、それを放任し、少しも諌めようとしない西野会長に対する復讐の思いだったのだ。
竹内が最初にもたらした情報では、復讐の対象は現社長、つまり西野会長の長男だった。その長男に佐久間が何をしようとしているのか、初めは、それを知りたいと思っただけだ。しかし、対象が香織だという。佐久間の復讐の思いが俺に伝染した。俺は声を押し殺した。
「奴は、女房を強姦するだけなのか?それ以上の、つまり、暴力を振るったり、傷つけたり?・・・しないってことか?」
またしても沈黙だった。竹内の息遣いが聞こえた。竹内も緊張しているのだ。ようやく震える声が俺の耳に届いた。
「はい、それはありません。計画では、私が、香織さんがよく行くバーで話しかけ、飲み物に睡眠薬を入れて飲ませます。そして二人でホテルに連れ込むんです。」
俺は、せせら笑いながら言った。
「おい、竹内、俺の知る限り、お前は、香織がもっとも嫌うタイプだ。」
「いえ、いえ、常務、そっちの方はこれでけっこう自信があるんです。たいていの女は笑わせてくれる男には警戒心を解きますから、その辺は大丈夫です。」
「おい、竹内。お前だって聞いて知っているだろう。女房の浮気のことは?」
「いえ、その、
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