第十六章
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話は切れた。箕輪の力を借りることは願ってもないことだ。飯島は思いもかけない展開を神に感謝した。孤独の戦いに友が駆けつけてくれると言う。飯島は涙を拭った。
いずれにせよ、佐久間の狂気を止めるには、飯島の種無しが証明すれば良いのだ。その診断書は飯島の自宅にある。それを取りに行かねばならない。すぐさま、飯島は、石原のマンションを出て自宅に向かった。
翌日、駒込の小さな喫茶店で箕輪と待ち合わせした。箕輪は、いつものように30ほど遅れてやってきた。椅子に座るなり聞いた。
「今度はつけられなかったか。」
「ああ、十分に用心したつもりだ。ところで会社は大丈夫なのか。」
「ああ、大丈夫だ。大きな物件を取ったばかりで、支社長はすこぶる機嫌がいい。それに、民間でも美味しい仕事を見つけた。これは隠し玉でとってある。営業なんて、受注さえ取れれば、何をやっていようと文句をつけられることはない。」
「全くだ。ところで、早速で悪いが、昨日の続きを教えてくれ。」
「分かった。香織さんが南と結婚したのは、堕胎した直後だ。」
「つまり、会長は、急遽、南と結婚させた。向田以外なら誰でもいい、誰かいないのか?って聞いたのかもしない。南は女性社員の憧れの的だった。香織さんは以前から南を知っていたのかもしれん。」
「ああ、そんなところだ。ところが、敦の話から、西野会長が早々に結婚させようとした理由が分かった。敦が言うには、堕胎手術の失敗で香織さんは子供が生めない体になってしまったと思っていたらしい。」
「だけど、二人も子供を生んでいる。」
「ああ、そうだ。しかし、敦に言わせれば、電話で香織さんがそう言って泣いたそうだ。つまり、医者の判断ミスってことだろう。」
「つまり西野会長は、医師の判断ミスを信じて、焦って南でもいいかってことになったわけだ。」
「そういうことだ。俺が話すのを躊躇したわけが分かったろう。」
「いや、分からん。俺は口が軽いから、知っていたら、誰彼なく話していたと思う。全く、お前は硬い。」
「しかし、プライバシーってもんがある。お前だって、人に知られたくない事を、ぺらぺら喋られたら、厭な気がするだろう。その辺は考えてやらないと。」
冗談を解さず、言葉を額面通りにしか受け取らない箕輪に苦笑いで答えた。
「分かった、分かった。ところで、昨日言っていた、敦に義理を欠いたという話、それはどういうことなんだ。」
「敦は、事業を起こそうとしていた。呉工業の下請けだ。向田社長が勧めたらしい。しかし、敦は今のビジネスが面白くてしょうがない。拳銃の輸入販売だ。しかし、親父の話にも食指が動いた。足を洗うチャンスだからな。」
「奴がまともな社会で生きていけるとは思えんが。」
「ああ、俺もそう思った。実は下請けの会社の専務になってくれって言われていたんだ。だいぶ迷っ
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