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無明のささやき
第十六章
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られている。誰かが、狂人の復讐劇を利用して何らかの利益を得ようしているとしか思えない。 
 飯島は思いを巡らせた。では、佐久間を操る男とは誰なのか。考えられるのは竹内か向田である。南ということも考えられるが、南は竹内に強請られてやむなく協力している可能性の方が高い。
 南の弱みになったのは、例の写真だと思っていたが、どうもぴんとこない。それが社内に配信されれば南のプライドは傷付くが、それで脅されたとしても殺人という犯罪に手を染めるなど考えられない。恐らく黒幕は竹内だろう。しかし、向田も気になる。
飯島は箕輪に電話を入れた。あの懐かしい声が響く。
「いったい、何処で何をしていたんだ。家にも、携帯にも電話を入れたが、まったく繋がらなかった。今、どこからかけている?」
「和子の旦那のマンションだ。」
しばらくの沈黙の後、箕輪が言った。
「聞いたよ、何と言っていいのか分からん。兎に角、今の状況を話せ。俺に出来ることは何でもするつもりだ。」
「有難う、実は、お前にどうしても聞きたいことがある。向田敦のことだ。お前が辞表を提出した日、お前は彼のことを気の毒な人間だと言った。そして、うちの会社の人間にかかわることだからこれ以上は言えないとも言った。それはどういう意味なんだ?」
「おいおい、待てよ。その前に全部を話せ。そうでなければ、俺だって話していいかどうかなんて分からない。」
「分かった。うまく喋れるかどうか分からんが、話そう。最初から、そして向田敦に対する疑惑についてもだ。」
 飯島は話し始めた。和子の事件から飯島襲撃までの出来事を時系列に沿って話した。何故、向田を疑い始めたのかも話し、向田が箕輪を恨んでいるということも付け足した。話し終えるのに30分近くかかった。箕輪はしばらく沈黙を保った。ため息が聞こえた。
「飯島、大変なことになったな。よし、明日から俺も休暇をとってお前に合流する。いいだろう、な。会ってから話そう。」
箕輪の申し出に、思わず涙が滲む。しかし、明日まで待てない。
「俺は今、話が聞きたい。今話してくれ。」
「分かった。詳しくは会ってから話すが、一つだけ教えておこう。敦は香織と付き合っていた。つまりかつて恋人同士だったんだ。香織は妊娠したが、親が強制的に堕胎させ、別れさせた。お前の推理は、当たっているかも知れん。動機はある。つまり、敦は西野会長を恨んでいた。詳しくは会ってからでいいだろう。どうせ明日には会えるんだ。」
「ああ、分かった。動機があるってことだけで十分だ。」
「それから、敦が俺を怒っている理由も分かっている。俺が、敦に義理を欠いたことは確かなことだ。」
「詳しくは会ってから聞こう。」
「ああ、俺は今夜の最終便で東京に行く。そして、お前の携帯に電話を入れる。」
「分かった。携帯はオンにしておく。」

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