第十六章
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んだろう。その南が、何で、佐久間に協力しなきゃならないんだ。」
「分からん、俺にもさっぱりだ。しかし、これは間違い無く南の顔だ。あの野郎、すっとぼけやがって。」
花田の声が響いた。
「いいか、良く聞け、石原弁護士が南だと証言しても、南があの事件と関わりがあるとは限らない。南が恐れ入りましたと言って、事件との関わりを認めれば、話しは別だ。いいか、その前に変な動きをするんじゃないぞ。」
「ああ、わかっている。ちょっと先生に代わってくれ。」
しばらくして石原が出た。飯島が聞いた。
「写真を撮るという奴等の目的のことを話したのか。」
石原は声を殺して言った。
「ああ、話した。しょうがないだろう。写真は立証しようがないが、ここまできたらもう隠しているわけにはいかない。南の奥さんが証言してくれることを期待するしかない。」
飯島は頷くと電話を切った。
広いリビングで、頭を抱え、呆然としてソファに座っていた。予想だにしなかったキャスティングは飯島の脳を混乱に陥れた。大きな溜息をついた。すると、何かが神経回路を目まぐるしく飛びまわって、過去の三つの出来事を脳裏に浮かび上がらせた。
飯島は、はっとして手で膝を打った。気違いじみた復讐劇のキーワードが突然脳裏に刻まれたのだ。別々に存在していた事実が、頭の中で関連をもって結びついた。そのキーワードとは、佐久間の愛娘、愛子である。
始めて佐久間と飲んだ時、佐久間は飯島を信頼しきっていた。佐久間の心には狂気が巣食ってはいたが、愛子に対する愛情だけは確かだった。あの時点で、佐久間は、飯島に愛子のことを含め、何かを託そうとした。佐久間は時期が来れば話すと言っていたのだ。
しかし、次ぎに会った時、そのことは話題にも上がらなかった。和子がホテルで襲われた直後のこと、飯島はセンターで佐久間を問い詰めた。その時、佐久間はこう叫んだのだ。「愛子はお前の子供ではないのか?」と
その時、佐久間は愛子が自分の子供であることに疑問を抱いてはいたが、未だ確信にまで至っていない。しかし、最後に会った立川の病院で、佐久間は言った。「愛子は君の子供だった。これは誰も否定出来ない。」と。
キーワードは愛子だ。愛子に対する疑惑が深まるに従い、佐久間の狂気が進行していった。最初は和子を陵辱し、映像に収める程度だったはずだ。しかし、それは一気にエスカレートし和子殺害へと突き進んだ。それは愛子が飯島の子供と確信したからだ。
明らかに、佐久間は愛子が飯島の子だと、誰かに吹き込まれた。それが佐久間の狂気を増幅させたのだ。何故なら、佐久間は自ら動くことは困難だ。だとすれば誰かが動いて佐久間に情報を伝えていた。まったく偽の情報を。
今まで、佐久間が誰かを操って、復讐劇を遂行していると思っていた。しかし、事実は逆で、佐久間は誰かに操つ
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