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無明のささやき
第十五章
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冗長な時間の流れの中、廊下で銃を構える男を凝視していた。
 男はやはり黒覆面で顔を隠しているが、金縁眼鏡と鋭い目つきで竹内だと分かった。飯島は拳銃の照準を竹内の心臓に合わせた。しかし、一瞬の逡巡の後、それを僅かに右上にずらした。竹内は拳銃を飯島にゆっくりと向け始めた。
 その引き金が引かれる寸前、飯島の銃が火を吹いた。轟音が響く。銃弾は竹内の左肩を貫いた。その反動で竹内の右手が左にずれ、それでも、ブス、ブス、ブスという発射音とともに銃弾が発射された。
 飯島の体は壁に激突した。頭を打って一瞬朦朧としたが、なんとかドアの方向に銃口を向けた。すると、肩から血を流した竹内がドアに姿を現した。飯島が銃を構えているのを見て、すっとドアから消えた。
 飯島はようやく立ちあがった。見ると、ヤクザが血だらけで倒れている。竹内の銃弾が3発とも当たっている。首筋に指を当ててみると、鼓動はない。よほど運のない男のようだ。よりによって仲間の流れ弾に当たるとは。
 飯島は、拳銃を構えて廊下を窺った。血痕が廊下に残されている。竹内は非常口から逃走したようだ。飯島は迷った。このまま逃げてしまおうか。しかし、銃声に驚いて、回りの部屋の客が起きだしている。もう時間がない。飯島はしかたなく警察を呼ぶことにした。

 警察の取調べは、ホテルで1時間、新宿警察署で3時間にも及んでいた。吉益と名乗る初老の刑事は、ねちこく何度でも同じ質問を繰返した。
「でも飯島さん、何故襲われたのか分からないと言うけど、拳銃で撃たれるなんて普通の市民ではあり得ないよ。」
「だから、さっき、説明したでしょう。私は、これまでの一連の事件が、佐久間と竹内の仕業だと言っているのに、それ以外の原因に心当たりはありませんか、なんて聞かれたって、分かりませんて言うしかないじゃないですか。」
「佐久間ねえ、よく分かんないんだけど、その佐久間さんは、元の奥さんを殺したと告白したんだね。それじゃあ、逃げたもう一人の男が佐久間ってことだ。」
「何度も言わせないで下さい。あれは竹内という男で、佐久間は入院してますって。」
「だけど、奥さんをひき殺した男と佐久間の関係も証明出来ないわけでしょう。それに、佐久間が何人もの配下を使って、女を強姦してAV撮ったり、人殺しをしたり、そんな荒唐無稽な話、テレビの刑事物ならいざ知らず、現実にはあり得ないよ。」
「だから、さっきも言いましたが、臼井建設に聞いてみてくれよ。大きな金が竹内に渡っている。その金を使って人を動かしているんです。」
「だけど、その竹内は覆面をかぶっていたんでしょう。どうしてそれが竹内って証明できるの?」
「八王子のホテルの従業員が竹内と殺された男の顔を見ているはずです。竹内を捕まえて肩に銃弾を受けた傷があれば、それで証明される。」
「しかし、お金のため
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