第十四章
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となど出来ない。南と兄弟になるなどまっぴらだった。飯島には香織が完全に酔っ払う前に、どうしても話さなければならないことがあった。酒を注ぎながら、飯島が聞いた。
「何故、佐久間の脅迫のことを警察に訴えないんです?」
「とんでもございませんわ。だって、その脅迫はまだ続いていますもの。」
「ああ、そうだろうと思った。しかし、いつまでも脅迫に屈しているわけにはいかんでしょう。一生金を払い続ける気かですか。」
「お金の要求は、私の知る限り最初の一回だけだったわ。その後はないって聞いている。」
「しかし、南の旦那は、あんたを襲った男と名古屋で酒を飲んで、お酌までしていた。」
「何ですって、あの佐久間にお酌をしていたですって。」
「いや、もう一人の男だ。竹内という名だ。」
「えっ、まさか私に薬を飲ませた男と?そんな馬鹿な。いったい何故。」
「俺は、竹内が例のネガのコピーを持っていて、南を強請っているんじゃないかと思っているんだが。」
「そうね、その可能性はあるかもしれない。結局、ネガも何枚もコピーしてあったってことよ。」
「ところで、さっき脅迫はまだ続いていると仰ったけど、詳しくお教え願えませんか。」
「飯島さん、撮られたのは写真だけじゃなかったの。DVDにも収録されていて、会社の誰かに渡してあるそうよ。でも、まさか音声入りの動画まで撮っていたなんて。」
飯島が頷く。香織が続けた。
「警察に言ったり、佐久間に危害が加えられれば、全社員のパソコンにそれが流れるんですって。だから、手も足も出ない。でも、あなた、絶えられる。あそこ丸出しの写真、会社のみんなに見られるの。私は自殺するわ。」
飯島は、佐藤電算室長の顔を思い浮かべた。佐久間が佐藤に接触していたことは確かだ。佐藤であればそんなプログラムを作ることなど朝飯前であろう。佐藤も佐久間の仲間になったのだ。考えてみれば、竹内も佐藤も佐久間と同期なのだ。
「もう一つだけ聞きたい。香織さんは向田敦っていう男を知っているんじゃありません。」
この質問に対する香織の反応は意外だった。飯島にしなだれかかっていた体がぴくんと反応したのだ。背中に置いた手でそれを感じた。俯いたまま香織が答えた。
「その方、今回の事件に関係しているの?」
「いや、関係しているのか否か、知りたいから聞いたんだ。」
香織はしばらく黙っていたが、大きく深呼吸した。そしてグラスをつかみ、それを一気に飲んでテーブルに叩き付けた。幸いにもグラスは砕け散ることはなかった。香織が舌を躓かせながら言った。
「そうそう、飯島さん。面白い話、聞かせてあげるわ。南は、あなたに嫉妬していたわ。最初から最後まで。あなたの情報は逐一私に入っていたの。南だけじゃなくて、父も兄もあなたのことを口にした。だから、あなたのことは、他人とは思えない。」
明ら
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