第十四章
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165センチ弱、中肉中背だ。」
飯島は女の反応を待った。女は、何度か口を動かそうとするが、押し黙ったままだ。しかたなく飯島が質問した。
「あなたを襲ったのは、佐久間ともう一人の男だ。そいつはどんな男だったんですか。」
ようやく女が口を開いた。
「その男は、私より少し背が高いくらいで、年の頃は50才くらいだったと思います。とある飲み屋で知り合ったのですが、とっても話がうまくて、笑わされっぱなしでした。でも、お店を出る時から記憶がないのです。何か薬を飲まされたのだと思います。」
「ええ、写真でもそんな様子で映ってました。心ここにあらず、そんな感じでした。そうですか、お気の毒に。」
一呼吸置いて、飯島が聞いた。
「つまり、あなたを襲ったのは二人で、佐久間ともう一人の男。そのもう一人の男の方は和子を襲った男と背格好が似ている。他に何か特徴はありませんか。」
「そうですね、年の割りに黒髪がしっかり生えてた。剛毛って感じ。それにポマード臭かった。」
「なるほど。そして、顔も油を塗ったように光っていて、金縁の眼鏡をかけている。そうじゃないですか。」
「ええ、そうです。でも、な、何で知っているの。その男のことを。」
思った通り竹内である。飯島は女の質問には答えず、深い溜息をついた。ある程度覚悟はしていたが、蛇のように執念深い人間を敵に回したことになる。
飯島は、確信に触れようと口を開きかけたが、途中で止めた。襖が開いて、店主が顔を出したからだ。お盆にお銚子とお通しを載せて、テーブルに置いた。物静かに、
「他に何か、」
と言って返事を待っている。女が答えた。
「お酒、一本じゃあ足りないわ、二合徳利を2本持ってきて。飲まずにはいられないの。」
その瞬間、それまでの神妙な態度をかなぐり捨てるような、そんな雰囲気を感じさせた。 飯島は酒を注ぎながら嫌な予感に捕らわれた。杯を合わせ、乾杯すると女は一気に飲み干し、今度はビールを飲んでいたコップを突き出した。
「飯島さん、私、飲まずにはいられない体になってしまったの。あれ以来、浴びるようにお酒を飲むようになったわ。」
「ええ、分かります。そうとうにショックだった。分かります。」
「ショックなんてもんじゃないわ。プライドをずたずたにされたのよ。女のプライドよ。」
飯島は何と言っていいのか分からなかった。
「お父様に、お願いしたわ。佐久間を殺してって。飯島さん、殺しても許されるんじゃありません?神様は許してくださるんじゃありません?」
香織は日本酒をあおるように飲み続けた。まるで早めに酔って理性を失いたいかのようだ。そして飯島の予感は当たった。香織は飲み続け、酔いにまかせて飯島ににじり寄り、しなだれかかるようになった。女体の芯が疼いている。そんな印象を受けた。
しかし、飯島は香織を受け入れるこ
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