第十三章
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5日前、石川から竹内が東京に向かったという連絡を受けた。奴らが動き出したのだ。石倉の次が飯島であることは間違いない。その時、石川はもう一つ、臼井爺さんからの情報を付け加えた。ニシノコーポレーションから臼井建設を通して竹内に大金が流れたというのである。
竹内が南或いは会長を脅迫し、金を引き出したのだ。その金が飯島殺害の軍資金に使われる可能性大である。案の定、二日目と三日目に、階下の居間、次いで日本間の窓ガラスが割られた。調べてみると、鉛のエアガンの玉が6発、床に落ちていた。
襲うとすれば家を放火する可能性が高い。奴らも当然銃器は揃えているはずだが、狭い家のなかでドンパチやるはずはない。裏は山、一方は道路、隣家は300坪の豪邸だが、家は離れており類焼の心配はない。火を避けて、飯島が家を出た時が勝負になる。
しかし、待てど暮らせど、その後、動きがないのである。危険が迫れば何かしら肌で感じるはずだが、それもない。苛苛と彼らの襲撃を待つ。緊張はそう持続出来るものではない。肩の力を抜いて、大きく深呼吸した。
ソファーに腰を落とし、一息入れると、次に睡魔が襲ってきた。しかし、まだ寝るには早い。両手で顔をごしごしこすり、眠気を意識の外に追いやる。飯島は腰に差した拳銃を引き抜き、スライドを引いて銃弾をチャンバーに送り込んだ。
飯島はためつすがめつ拳銃を眺めた。その拳銃は、雑誌で調べてみるとS&W製のM945と言うニュウモデルである。銃身の前後に鱗のような彫りが刻まれ、冷たく黒光る鋼の輝きと洗練されたフォームは飯島を魅了して止まない。
飯島は、鉄の冷たい肌触りを頬で味わい、ほのかに残る硝煙の匂いを鼻で楽しんだ。銃弾は装着されている。飯島は銃をクッションで包むと引き金を引いた。ボンというくぐもった音と共に火薬の煙と臭が部屋中に充満し、皮製のソファに穴が開いた。
飯島はそのままソファに倒れ、天井を見詰めた。誰かが飯島の家に近付いてくる。耳を澄まし、靴音に神経を集中させる。目を開いたままだが、虚空に女性の姿が浮かび上がった。立ち上がり、窓辺に行って覗いて見た。赤いコートは透視した通りだ。
飯島は、自分の感覚が研ぎ澄まされて行くのが分かった。殆ど食事をせず、代わりに度の強いウオッカを飲む。酔いが覚めてくると、再びあおる。そして酔って眠る。そんな生活が何日も続いていた。
しかし、眠っている間に襲われる可能性は、アルコールと自暴自棄が支配する世界に入ると、取るに足りない問題となり、あっさりと無視される。もともと飯島には豪胆なところがあり、開き直った時の強靭さは並ではない。とはいえ、押入れに寝ている。もし、物音に気付かず、殺られたら、その時は諦めるしかない。
ふと、テレビを見ると、新興宗教の教徒が人々を勧誘する様子が放送されている。飯島はテレ
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