第十三章
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石原の手前それが出来ない。ふーとため息をつき、始めて言葉を発した。
「石原さん、何か言って下さい。俺を責めているんですか。」
「ええ、その通りです。貴方は、警察に例の写真のことを言っていなかった。」
「ああ、言ってない。でも、俺がそう証言したとしても、南はそんな事実はないと言い張った。死んでも認めないと言ったんだ。証拠の品がないのだから何を言っても無駄だ。」
「言い訳はよせ。和子が殺されたのはあんたのせいだ。あんたが和子を殺したんだ。」
石原の声が泣き声に変わった。その涙声を聞いて飯島の高ぶった感情が急激に醒めていった。
「ああ、俺は、何を言われても反論出来ない。もしかしたら、俺は本当に疫病神かもしれない。和子には申し訳無く思っている。」
「そうだ、あんたは疫病神だ。佐久間が、あんたに恨みを抱いた。そのために、和子は殺されたんだ。警察は、今度の犯人は前の事件と無関係と言っているが、絶対に関係している。事故じゃない。」
そう言って、目を赤く染め涙を貯めている。飯島が聞いた。
「犯人は捕まったと聞いたが、犯人は何と言っているのですか。」
涙を拭きながら石原が答えた。
「急に飛び出して来たって。マンションから急に飛び出して来たって言っている。だけど和子が跳ねられたのは、マンションの出口から5メートルも歩いた位置だ。マンションから飛び出したなんて嘘だ。」
飯島は石原の涙を見て、かえって冷静になれた。男二人で涙に暮れる姿なんて、飯島のプライドが許さない。飯島は泣きたい気持ちを無理矢理怒りに変えた。
「石原さん、警察はそのことについて何と言っているんです。」
「三枝は、つまり和子を殺した男ですけど、酔ぱらっていたし、暗かったので、そんな風に見違えたんだろうと言ってます。でも、あいつは和子を殺そうと待ち構えていたんだ。だってそうでしょう、飯島さん。あんたが、和子の命が危ないと言った直後に事故は起きたんだ。」
飯島はいよいよ冷静にならざるを得なかった。石原は参っている。あの冷静な判断を下す聡明な石原はそこにはいない。
「石原さん、落ち着いて下さい。よーく、考えて下さい。まず、その三枝はどんな男です。仕事は何です?」
「トラック運転手で、独身、酒と賭け事で家族にも見放された哀れな男です。」
「だとしたら、佐久間に雇われた可能性は大だ。しかし、警察は佐久間には経済的には困窮していると見ている。」
「でも、佐久間は西野家から金を強請ったと言ったじゃないか。その金で三枝を雇うことは出来たはずだ。」
「いや、それが証明出来ない。さっきも言ったが、南は写真など見ていないし、佐久間から脅迫された事実もないと言い張っている。」
石原は、深くため息をつき、頭を抱えてまた泣き出した。飯島が続けた。
「そして、その写真を見た唯一の証人の和子もこの世にい
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