第十二章
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「どうする、ことの一部始終を会長に報告しようか。西野会長はさっそくお前等の組長に電話を入れる。貴様等が俺に痛い目にあわされたってな。」
こう言って睨むと、向田は下唇を噛んで、ふいっと横を向いた。その仕種がどこか子供じみていて、飯島は思わず相好を崩した。
「実はな、向田。俺は、警察に写真を提出したと言ったが、あれは嘘だ。もし、俺の言うことを信じるのなら、会長には電話しない。どうだ。」
向田がきょとんとして視線を向けた。飯島が続けた。
「警察に提出したなんて嘘だよ。そう言えば、俺に手を出さないと思ったが、裏目に出た。お前等は何が何でも俺を痛めつけるつもりだった。組長からそう指示があったのだろう?違うか?」
向田は無言のままだ。ということは肯定したということだ。
「どうだ、組長には、俺を散々痛めつけたが、ネガのコピーなど無いと言い張ったと言えばいい。本当にそんな物持っていないんだからな。俺は南にも、そう言ったはずだ。」
向田が答えた。
「ああ、信じることにするよ。親父も、多分、写真は持っていないだろうと言っていたからな。それはそうと、最近の素人は気違いが多いよ。俺が咄嗟に避けなければ頬に穴が開いていた。」
飯島が笑いながら言った。
「しかし、あんたは本当にヤクザさんか。どうもそうは見えない。人品卑しからずって感じだな。箕輪が可愛がっていたってのも分かる気がする。」
この言葉は予想もしない反応をもたらした。向田が顔色を変えてすごんだ。
「テメエはあの糞野郎の知り合いか。どうりで胡散臭いと思ったぜ。いいか、お稚児さんじゃあるまいし、可愛がるなんて気色悪い言葉を二度と使うな。いいか、分かったか。それに二度と野郎の名前をほざきやがったら、ただじゃおかねえぞ。」
「おいおい、ヤクザのお前さんに、胡散臭いなんて言われたかない。まあ、何があったか知らないが、お前さんのご要望には応えよう。」
「テメエも、その名前を出せばこっちが軟化すると思ったらしいが、その逆だ。野郎の友人と分かったからには、遠慮はいらねえ。かえって仕事がやり易くなっただけだ。覚えておけ。」
「お前さんは俺に遠慮していたわけか?」
「当たり前だ。素人にはそれなりに気を使わんと面倒なこともある。もう容赦はしないってことだ。」
「分かった、分かった。そうかりかりするな。とにかく、組長でも会長でも、どっちでもいいけど、とにかく伝えてくれ。ネガのコピーなど撮ってないってな。」
向田が立ちあがった。思いのほか背が高い。飯島も180センチ近いが、目線が5センチほど上回っている。飯島を見下ろしながら、向田が口を開いた。
「おい、飯島さんよ、これだけは覚えておけ。今回はお前にやられたが、次回は分からん。いいか、俺達の仲間は日本中どこにでもいる。皆、人を殺すことなど何とも思わない連中だ。もし、
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