暁 〜小説投稿サイト〜
無明のささやき
第十二章
[4/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
とも思もっちゃいねえからな。」
振り向くと例のスキンヘッドが飯島の1メートル真後ろに立っている。取り合えず、動く気配なない。飯島は正面に向きなおり、男に向かって言った。
「ああ、何をしに来たか分かっている。その前に、名前を名乗ってもらおうか。俺は名無しの権兵衛とは話さない。おい、後ろのスキンヘッド。手前も同様だ。」
後ろの男が、一歩前に出て、飯島の肩に手を掛け、力を込めようとした矢先だ。鋭い声が響いた。
「いい度胸だ、飯島さんよ。その度胸に敬意を表して、名乗ってやる。俺は飯田組の向田だ。後ろの男は佐野と言う。これでいいだろう。」
右肩に食いこむスキンヘッドの握り拳を振りほどき、飯島が答えた。
「向田さん。あんたの探している写真のネガはここにはない。」
「では、何処にある。」
「警察に提出している。」
 向田は、ため息をつき、下を向いて笑っている。ふと顔を上げると、鋭い眼光で飯島を見据えた。突然、スキンヘッドが飯島を羽交い締めにして、た。ぐいぐいと首を締めつけてゆく。向田の冷たい声が響いた。
「そうかい、もう手遅れだってわけだ。ふざけた真似をしやがって。」
飯島は満身の力を込め男の腕に逆らって首を起こした。そして叫んだ。
「ああ、手遅れだ。警察は動き出した。もう誰にも止められない。いいか、もし、お前等が俺に暴力を振るえば、警察が黙っちゃいない。そんなことぐらいアホでも分かるはずだ。」
向田が答えた。
「どうかな、俺はどっちかと言えばアホだ。それに俺はお前が暴行罪で俺達を警察に訴えるとは思わない。お前はそんなアホじゃない。そうじゃないか。訴えればもっと怖い目に会うことになる。分かるだろう、飯島さんよ。」
「馬鹿言え、訴えるに決まってるだろう。俺はお前以上にアホなんだ。」
「そうかい、それじゃあ、試してみるか。」
と言うと向田が立ちあがり、近付いてきた。飯島が叫んだ。
「この野郎、二人がかりとは、卑怯じゃねえか。てめえ、糞野郎が、めっためたにしてやる。俺は今、ストレスが溜まってるんだ。」
飯島は、スキンヘッドの首筋めがけて右肘を渾身の力で振り下した。ガツンと手応えがあった。一瞬、羽交い締めしている力が抜けた。
 飯島は腰を落としながら両腕を抜いて、スキンヘッドのズボンの両裾を握り、今度は立ちあがりながら思いきりすくい上げた。バタンという大きな音が響いた。飯島は、すかさず振り向き股間を蹴った。スキンヘッドがうめき声を上げて転げまわる。
向田が、背中に飛びかかって来た。ふらふらと前によろめいたが、ちょろい相手だとすぐに分かった。とにかく体重が軽い。飯島は背負い投げを浴びせた。思わず感心するほど良く飛んだ。飛んで行く姿が可愛い。極端に長い両足がバタ足をしている。
 しかし、向田は思いの外敏捷で、両手を床につきふわりと着地した。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ