第十一章
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てきたんです、竹内の事務所に。中町の交差点近くの雑居ビルで、まあまあのオフィイスでしたよ。女の子と若い営業マン一人置いていました。」
「へえ、それで。」
「社長のことを聞くと、東京に行っているって言うんです。それで、何時帰るかって聞くと、さあっと言って、分からないと答えたんです。で、詳しく聞くと、しょっちゅう東京に行っているそうです。」
「なるほど、そう言う訳だ。」
「何か心あたりでも、あるんですか。」
「ああ、ある。今は詳しく言えないが、竹内は佐久間と組んでいる可能性があるってことだ。」
「えっ、佐久間とですか。佐久間と組んで何をしようと言うのです?」
「実をいうとな、いいか、石川、石倉が自殺しただろう。あれは自殺じゃあない。殺されたんだ。しかも佐久間に殺された。」
「まさか、そんなこと。」
と言って絶句した。
「まあ、信じられんだろうな。しかし、佐久間はあることで、会長を脅迫していた。そして5000万円を脅し取っている。これは南から聞いた話だから、確かな情報だ。もし竹内が佐久間と組んでいるとすれば、会長を脅迫した材料を竹内も持っているってことだ。南が竹内にぺこぺこしていたのは、脅迫されているのかもしれない。」
「しかし、考えられませんよ。飯島さん、冗談言ってるんでしょう。まさか殺人だなんて、そこまでやりますか。確かに悔しい気持ちはわかります。でもそこまで・・・・。」
「いいや、冗談なんかじゃない。実は佐久間は狂っている。憎しみで頭がいかれちまった。殺人なんて気でも狂わなければ出きっこない。」
石川は押し黙った。飯島が続けた。
「そこで相談だが、お前の助けがいる。実は、佐久間はあることで俺を恨んでいる。奴が何をするか、今のところ分からない。しかし、実行者が竹内ということも考えられる。だから、竹内が名古屋にいれば、俺も少しは安心できるわけだ。」
「つまり、竹内が名古屋を離れたら、飯島さんに電話すればいいんですね。」
「そういうこと。頼むよ。」
「ええ、分かりました。あの女子事務員となんとかコネをつけますよ。兎に角、気をつけて下さい。」
「どうも有難う。」
飯島は電話を切ると、ウイスキーの瓶を引き寄せ口飲みした。アルコールの熱い感覚が体内にじわじわと広がり、荒んだ心に一時の安らぎを与えた。時計を見ると午後1時を回ったところだ。酔いが急激に回り瞼を重くする。飯島は再び深いまどろみに落ちていった。
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