第十一章
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間の狂気が叫ぶ。佐久間には、その絶望に見合うだけの犠牲、流血が必要ななのだ。事実、佐久間の予定表には飯島殺しが記載されており、その方法も考えていた。その方法とは撲殺である。
昔鍛えた拳で、あの端正な顔が跡形もなくなるほど殴る。気を失えば水をぶっ掛け目覚めさせる。そしてまた…。想像するするだけでエクスタシーを感じてしまう。紫色に腫れ上がる顔、飛び散る血、うめき声。
今日、外から戻ると、留守電に竹内のメッセージが残されていた。結論が出たと言うのである。当初、竹内は飯島殺害には気乗りしないようだった。と言うより、石倉殺害に荷担して以来、佐久間との関わりを避けるようになっていた。
佐久間はその理由に気付いていた。簡単なことだ。佐久間が、もう金を持っていないことを知ったからだ。竹内は石倉殺害を1000万で請け負った。その後、飯島殺害を渋っていた竹内は、その報酬として1200万を要求してきたのだ。
確かに会長から5000万を強請り取り、竹内と山分けにした。だから竹内の要求額は本来払えない額ではなかった。しかし、実を言うと、佐久間は資材物流センターの佐藤電算室長に700万もむしり取られていたのである。
復讐を遂げるための安全装置作ってもらうためだ。最初、佐藤は手間賃程度と言っていたが、中身を知って1000万円まで吊り上げてきた。その妥協点が700万だったのだ。いつもの佐藤の悟りきったような顔が歪んで、卑しさが滲み出ていた。
竹内の要求は佐久間の取り分全てを吐き出させることだった。手元にある500万で交渉したが拒絶された。まさに金の切れ目が縁の切れ目である。この時、竹内は、佐久間に金がないことを察知したのだろう。
そんな膠着状態が一週間続いた。そして、竹内は、つい最近、意外な提案をしてきたのだ。それはDNAによる親子鑑定である。当初、佐久間はそれを拒絶した。それをはっきりさせるのが怖かったのである。
しかし、その提案に徐々に心惹かれていった。復讐にも大義名分が必要なのだ。狂気が勝った。佐久間はそれにゴーサインを出した。そして、竹内のメッセージは、その結論が出たということなのだ。受話器を持つ手が震えていた。
「もしもし、竹内です。」
いよいよ運命の時が訪れようとしていた。佐久間は身構えた。
「佐久間だ。」
「よう、佐久間さん。メッセージを聞いたわけだ。そう緊張するなって。或る程度、覚悟は出来ているんだろう。」
「ああ。」
「ここに診断書がある。その業界では有名な鑑定会社の診断書だ。後でファックスする。いいか、よく聞け、読むぞ。」
「ああ。」
「サンプルA、つまりあんたの毛髪に付着していた毛根だ、と、サンプルC、つまり愛子ちゃんのだ、とのDNA配列は一致せず。これに対し、サンプルBとサンプルCは、その配列の類似から親子と断定。」
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