第十章
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起こった事態が理解できた。飯島がぽつりと言った。
「二人には本当に申し訳無かった。いたずらに不安を煽り立てたようだ。確かに僕の考えすぎだった。こうして二人が無事だったのだから。」
こう言って、飯島は二人を交互に見た。ようやく、飯島も平静さを取り戻していた。一呼吸置いて、飯島が話し始めた。この数日に起こったこと、そしてこれまでの経緯の全てを語った。最後にこう結んだ。
「佐久間が石倉をセンターに左遷させた。そして、その石倉が移籍直後、センターで自殺した。どうみても、佐久間が関係しているとしか思えない。」
じっと聞き耳を立てていた石原が口を挟んだ。
「飯島さん、あなたはご存知ないと思いますが、私の親父はヤクザと関わっていました。この一年、私はそのヤクザとのやり取りで、神経が磨り減っています。200万もの金をヤクザに支払った。和子襲撃はそっちの線の可能性もある。」
「でも、石原さん。もしあの時、和子が実際に襲われ、子供が流産でもしていたら、あんたは、そのヤクザの言いなりになって、金を払い続けるか?絶対にそのヤクザと対決しようとするだろう。あんたは、そっちの方のプロなんだから。」
こう言って、飯島は石原の同意を待った。石原が頷くのを見て、話を続けた。
「ヤクザだって、大切な金の成る木を切り倒したりしない。まして警察が動き出したら困るのはヤクザだ。警察は事件となれば間違いなく動く。ヤクザはプロだからそこまで読んで行動する。刑事事件にならない微妙な線で恐喝しているはずだ。」
石原はまたしても黙って頷いた。飯島の言うことも一理あるからだ。飯島が続けた。
「佐久間が後ろで糸を引いているのであれば、石倉に直接手を下したのは間違いなく和子を襲ったそのヤクザだ。」
石原も和子も飯島の言葉に耳を傾けている。
「石原さん、これから言うことが、俺が一番心配していることだ。もし、そのヤクザが石倉を殺したとすれば、和子は、その殺人者の顔を知っている唯一の証人ということになる。和子は顔を覚えていないが、ヤクザはそんなことは知らない。」
石原が冷静に答えた。
「目撃者を消せってわけですね。確かに、飯島さんの言う通りです。でも、反論があります。まず、彼らが和子を襲った動機は何ですか。」
「佐久間が私を恨んでいるからです。」
「何故、飯島さんではなく、妻の和子を襲ったのです。」
「佐久間は、私が彼の妻と出来ていたと勘違いしているからです。恐らく佐久間は、私に同じ苦しみを与えようとした。つまり寝取られた恨みを晴らしたかった。」
「では、そのヤクザが石倉を殺しのなら、それにはそれなりの報酬があったはずです。だからこそ危険を犯すことが出来た。しかし、和子はどうですか。一度失敗しているし、もう飯島さんの妻ではない。従って、佐久間が和子の殺害に金を払うとは思えない。」
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