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無明のささやき
第十章
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石倉が自殺したんだ。」
「えっ、あの石倉さん、自殺したの、またどうして?」
石倉は一度、飯島の家に遊びに来たことがあった。和子はそれで覚えていたらしい。
「つい最近、石倉はセンターへ左遷された。警察はそのショックで自殺したと見ている。だけど、俺は、石倉は佐久間に殺されたと思っている。何故なら、石倉をセンターへ送ったのは佐久間なんだ。お前を襲ったのも佐久間だし、みんな佐久間の仕業なんだ。」
飯島は興奮していて、言いたいことが上手く喋れない。
「待って、待ってよ。何を言っているのか分からないわ。だって、佐久間さんは、あの事件、私が襲われた事件とは無関係だったそうよ。刑事さんが言っていたわ。それに、石倉さんをセンターに異動させる力なんて佐久間さんにはないはずよ。」
「いや、それがあるんだ。警察には言ってないが、お前を襲う前、佐久間は南の女房を襲った。実は、あの写真の女は南の細君だ。佐久間はあの写真をネタに南から5000万円脅し取った。そして、その次に石倉をセンターに送るよう指示したんだ。」
「えー、本当なの。あの写真の女性は常務さんの奥さんだったの。」
「ああ、お前もどっかで会ったことがあるような気がするって言っていたが、俺達の結婚披露宴でお前より目立った派手な女がいただろう。あれがそうだ。」
「でも、何故、私が襲われなければならなかったの。」
そう聞かれて飯島は言葉に詰まった。言いたくない事柄が多すぎた。あれこれ考えを巡らせ、ようやく口開いた。
「実は、佐久間は、俺がずっと奥さんと浮気していて、しかも子供も俺の子供ではないかと疑っている。」
「待って、本気で言っているの。奥さんの浮気の相手が、たとえあなただとしても、そんなことで、ヤクザを使って人を襲わせたりするかしら。あなたに対する復讐だと言いたいのだろうけど、それでは動機が曖昧過ぎるわ。」
「ああ、確かにそうだ。でも、奴は狂っている。狂人なんだ。動機なんて必要ないのさ。あいつは、お前を襲ったと、間違い無く俺に言ったんだ。」
和子は押し黙った。飯島は、本題に入ることにした。命を狙われているなどと刺激的な言い方は避けたほうが良さそうだ。とにかく相手は妊婦なのだから。口を開こうとした矢先、和子が言った。
「ちょっと待ってて、誰か来たみたい。ねえ、ちょっとまっててね。」
「ああ。」
と言って待っていたが、しばらくして不安になった。誰かって誰だ?まさか、あのヤクザではないか。言い知れぬ不安が、飯島を襲った。
「おーい、おーい。」
飯島は叫び続けた。もっと早く、ヤクザが狙っていることを忠告すべきだった。はらはらと時間は過ぎてゆく。叫べども返事がない。突然、和子の声が聞こえた。
「ご免、待たせて。小包だったわ。」
飯島の頭は疑惑が渦巻いた。こんな時間に小包なんて届くのか。既に8時を
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