第九章 双月の舞踏会
第二話 桃りんご狩り
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「バラしても二トンはあると思うんだが……昔から思っていたが、一体どんな胃袋をしているんだ?」
「……ありえないでしょ」
「一人でもくもくと焼いては食べるを繰り返していたアルトを見ていると、食料の備蓄がなくなったら、自分も食べられてしまうじゃないかなんて馬鹿な考えが浮かんできて……あはは……そんなことあるわけないんですけどね」
「あはは」と冗談っぽく笑うティファニアだが、その目に宿る恐怖は真に迫っていた。
ルイズは圧倒されて何も言えず固まっている。
気が付くと、士郎は笑うティファニアの頭の上に手を伸ばしていた。頭の上に置いた手でぽんぽんと優しく叩くと、顔を上げたティファニア小さく頷いて見せ、二人は共に苦労を分かち合ったものだけが浮かべられる独特の笑みを口元に浮かべた。
力なく頷き合った二人は、それから黙って粛々と背中に背負った籠の中に桃りんごを入れていく。ティファニアが語った本当にあった怖い話を聞いたルイズも、青い顔をしながら黙って士郎から渡された桃りんごを背中に背負った籠の中に入れるという作業を続けている。
桃りんご狩りを始めて一時間程経つと、背中に背負った籠の中も一杯になり始めた。
士郎がもうそろそろ止めるとしようかと、腰を伸ばしながら何気なく周りを見回し、
「ッッ!!?」
巨大な桃りんごが揺れる姿を目にした。
「んしょっ! んっ! ぅう! んっうっ!」
妙に艶がある掛け声を上げながらぴょんこぴょんこと飛び跳ねているティファニアの姿が士郎の視界一杯に映った。まるでズーム機能があるかのように、飛び跳ねるティファニアの身体の一部が士郎の視界一杯に広がる。
「っく、ぅあ、ぅんっ」
必死に腕を上に伸ばして、何度も地を蹴り飛び跳ねているティファニアの視線の先には、ジャンプしてぎりぎり届くか届かないかの高さに生る大きく熟れ頃の桃りんごの姿があった。
ぷるぷると必死に伸ばした指先を震わせながら、何度もティファニアがジャンプする度に、もう一つ(二つ?)の熟れ頃の桃りんごが盛大に揺れている。
「あんっ、もうっ、なん、で、あと、もう、すこ、し、いけ、そう、っ、なん、で、だめ、なのっ?」
空を仰ぎ飛び跳ねるティファニアの顔の下で今日(歴代)一番の大きさを誇る桃りんごが揺れる度に、士郎の顔がその揺れに同期するように上下する。
「っく、あと、もう……少しっ!」
「あ、テファ、それは俺が―――」
指先をピンッと伸ばし、ぷるぷると身体を震わせながら爪先立ちするティファニアの姿を見て、ハッと意識を取り戻した士郎が、自分が代わりに採ろうと近付いた瞬間、
「えいっ! あっ、やった……あれ?」
「テファっ!」
爪先立ちの状態からジャンプしたティファニアの指先が桃り
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